クロム錯イオンのイオン交換樹脂による分析(第3〜4報) : 第3報スチレン系陽イオン交換体と陽電荷クロム錯イオンの交換 第4報ポリスチレンスルホン酸とAmberlite,IR-4Bによるクロム錆イオンの分析
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概要
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前報において蓚酸クロム錯イオンと塩形陰イオン交換樹脂Amberlite IR-4Bとの反応を検し,樹脂にはそれぞれ製造時の個体差はあるが何れも醋酸塩にしたものが錯化合物と最も良好なる置換をなす事を認めた.而してこれは温度の影響が大きく,一般に置換時に或る程度温度を保ったものが特に完全であった.従って各種電荷クロム錯イオンを含む液を陰陽両イオン交換体に交互に通過して液中の錯イオンの電荷分布の分析を志す際には陰イオン交換体の場合と同様に陽イオン交換体についても次の扇項の検討が必要と考えられる.<BR>(i)陽イオン交換体と陽電荷クロム(III)錯化合物の置換,すなわち前報と同様に陽電荷を持つ錯イオンが陽イオン交換体と完全に置換するや否やを検討しなければならない.<BR>(ii)陽イオン交換体の網目の大きさの問題.すなわち陽電荷クロム錯イオンは陰電荷のそれと異なり加熱時またはアルカリ添加時等には必ず膠質化が起って来る.従って電荷は不変であっても分子が大きくなるため,交換体の内部にまで侵入し得ないで,陰電荷や非解離の化合物の如く漏出して来る場合が考えられる.故にどの程度の膠質化状態までこの方法が使用できるかという事の検討が行わなければならない.著者等は主として上記2つの事項について研究を行い次に示すような結果を得たのでここに報告する.<BR>陽電荷クロム錯イオンとスチレン系陽イオン交換体との吸着関係を検討し,更にこれに先に報告した電気泳動の数値を参照して次の事実を認めた.<BR>(1)陽イオン交換体はHR,NaR,KR等の形の時最も良くクロムイオンと交換し,これはクロム核内に酸根が入っている時でも核外酸恨が異った場合でも変りがない.<BR>(2)陽電荷クロム錯イオンは加熱,アルカリ添加等により膠質化を起すが,かかる場合でも網目構造の間隙の広い樹脂(ジビニールベンゼンの量零のポリスチレンをスルホン化して製したもの)を用いれば陽電荷クロム錯イオンはゲル化直前まて完全に陽イオン交換体に吸着する.<BR>先に第1報,第2報において陰電荷のクロム蓚酸錯化合物は Amberlite IR-4Bを醋酸塩にした時にのみ樹脂と最良の置換を示し,また第3報においては陽電荷クロム錯化合物はポリスチレンスルホン酸の最も網目構造の広いものを HR,NaR,KR 等の形にすればクロムのゲル化直前まで結合し得る事を認めた.従って陽電荷,陰電荷,非解離等の各種の蓚酸クロム錯塩を含む液を上記2種類の樹脂に順次通過すれば原クロム液中の錯イオンの電荷分布を分析する事が出来る筈である.この場合陰イオン交換体→陽イオン交換体,陽イオン交換体→陰イオン交換体の2通りの通過方法が考えられる.前者では先に述べたように陰イオン交換体である AmberliteIR-4Bを醋酸塩にしたものが最も有効であったが,この場合陰電荷錯イオンが樹脂と完全に結合するためには或程度温度をかける事が必要である事を認めたので(30°〜40℃),極めて熱に弱い[Cr(H<SUB>2</SUB>O)<SUB>6</SUB>]<SUB>2</SUB>(SO<SUB>4</SUB>)<SUB>3</SUB>等が存在する場合にはこの変性によって電荷の異る化合物を生ずる危険がある.従って方法としては後渚を採用した方が適当であると思われる.<BR>陽電荷クロム錯イオン陰電荷クロム錯イオン非解離クロム錯イオン混合液→ポリスチレン・スルポン酸(陽イオン交換体)通過→吸着物(陽電荷クロム錯イオン)→漏出液→IR-4B酷酸塩(陰イオン交換体)通過→吸着物(陰電荷クロム錯イオン)→漏出液(非解離クロム錯イオン)<BR>この想定において考えられるのはの(i)段階では陰電荷,非解離等のクロム錯イオンが陽イオン交換体に結合する事なきや,また(ii)の段階では非解離クロム錯イオンがIR-4BのRCH<SUB>3</SUB>COO形に結合する事なきやの二つの問題である.著者等はこれらの事実に検討を加えその結果次に述べる様なクロム錯イオンの新分析方法を確立したので茲に報告する次第である.<BR>化合物の標準として電荷の異る蓚酸クロム錯化合物を用い,これらについて先に報告したAmberlite IR-4Bと陰電荷クロム錯イオン,同じくポリスチレン・スルホン酸と陽電荷錯イオンの反応研究の数値を参照し,クロム錯イオンのイオン交換樹脂による新らしい電荷分布の分析方法を確立した.次いでこの方法に従って[Cr(H<SUB>2</SUB>O)<SUB>6</SUB>][Cr(Ox)<SUB>3</SUB>]の老化変化,陽電荷クロム錯イオンのアルカリ添加時,又中性塩添加時の変化,グルコース還元液の還元方法の差異による内容変化等について検討を加え,これらが先に報告した電気クロマトグラフの分析法とよく一致する事を認めた.
- 社団法人 日本分析化学会の論文
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