小集団学習における科学的意味の構築 : 小集団に見られるオーバーラップ発話から
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概要
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小集団の話し合い活動における科学的意味の構築を,発話の順番取り(Turn-Taking)の視点から分析した研究である。小集団の会話は雑然とし,オーバーラップ発話がよく見られる。これまでの話し合い観では,オーバーラップ発話は,好ましくない行為,学習に適さない行為として否定されてきた。しかし実際の小集団学習で学習者は,オーバーラップ発話をすることでも科学的意味を構築している。先行発話の意味を受けてオーバーラップする発話を3つに分類すると,「バックチャンネル型」「対立型」「共同型」となる。(1)バックチャンネル型では,意味の共有や強化が起こる。それによって話し手の発話が,維持・促進される。(2)対立型オーバーラップは,参加者間の思考の差異を明らかにし,意味の再編の手がかりとなる。(3)共同型オーバーラップは未完成な発話をつなぐことで,意味を生成していることがわかった。ザトラウスキーが言うように,我々は,話し手と聞き手の二分法から脱し,話し合いを参加者間の「相互作用」とする立場に立つ必要がある。オーバーラップ発話は,話し手と聞き手の区別のない,緊密な相互作用の場になる。今後の学校教育では,オーバーラップ発話を,有効なコミュニケーションスタイルとして捉え,学習をデザインしていく必要がある。
- 日本理科教育学会の論文
- 2004-03-15
著者
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