北海道における動物日本脳炎に関する研究 : III.馬の自然感染例における血清学的観察
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概要
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馬の日本脳炎に関する血清学的な研究は人ならびに他動物のそれに比較して著しく少ない。現在わが国では,馬の飼育頭数の減少と予防接種の普及によって,本病の発生数が年々激減している。たまたま,われわれは1966年9月,北海道の十勝地方において馬日本脳炎のまれな発生例に遭遇したので,そのときの自然感染馬について血清学的な研究を行ない,次の成績を得た。1.この発生では4頭において反射機能減退,知覚麻痺,旋回運動および後躯蹌踉などの臨床症状がみられた。そのうち1頭(No.1)は発病から4日目に斃死したが,他の3頭(No.2,3,4)は発病から3〜4日目に回復した(第1表)。2.これら4頭では,発病中に採取された血清についてJaGAr#^01株に対するHI,CF抗体を測定したところ,HI価は1:320〜1:640,CF価は1:16〜1:64に保持されていた。またその対照群としてその周辺の農家に飼育されていた健康馬5頭についても血清抗体を測定した結果,そのうち3頭(No.5,6,7)がHI抗体を1:160〜1:1,280,CF抗体を1:16〜1:64に保持した(第1表)。なおこのHI抗体は2-メルカプトエタノール(2-ME)に対して感受性を示すところから(第1図),この3頭は今回の発生において不顕性に感染したものと推察される。しかし,他の健康馬2頭では各抗体とも陰性であった。3.この発生では斃死馬からの原因ウイルスの検出は不成功に終ったが,感染馬血清のJaGAr#^01株と中山株に対するHI抗体の反応態度から,流行ウイルスは免疫学的にJaGAr型に属することが推察された(第2表)。また1948年北海道における馬日本脳炎の大流行の際に分離されたオルケストル株も,今回の感染馬血清ならびに日本脳炎ワクチンを接種した人血清の各ウイルス株に対するHI抗体の反応態度から,JaGAr型に属するような成績を得た。4.感染馬血清(No.1,7)のSephadex G-200によるゲルろ過試験において,No.7では人血清と同様にHI抗体はIgMとIgGの両分画に,CF抗体はIgG分画のみで検出された。次に感染馬No.1では,そのほとんどの抗体が2-ME感受性でありながらCF抗体の検出された例で,このCF活性がどの免疫グロブリンに属するかを検討したが実証できなかった(第2図)。しかし,馬の日本脳炎ウイルス感染に伴う免疫グロブリンの推移と各種抗体活性との関係は,人における本病感染例のそれに比較し,少しく異なることを考察した。
- 帯広畜産大学の論文
- 1971-12-15
著者
-
後藤 仁
帯広畜産大学家畜微生物学教室
-
清水 亀平次
帯広畜産大学家畜微生物学教室
-
吉田 隆
帯広畜産大学家畜微生物学教室
-
白幡 敏一
帯広畜産大学家畜微生物学教室
-
白幡 敏一
帯広畜産大学家畜微生物学
-
白幡 敏一
帯広畜産大学家畜微生物学講座
-
後藤 仁
家畜微生物学教室
-
後藤 仁
帯広畜産大学
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