牛におけるロタウイルス感染症のウイルス学的ならびに血清学的研究

概要

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1982年3月から4月に十勝種畜牧場で生まれた126頭の子牛のうちの109頭が激しい下痢を示し,うち2頭が斃死した。下痢を示した期間は2〜12日であったが,生後2〜20日目までに発症した33頭中26頭(78.8%)からロタウイルスが分離された。ウイルス分離の確認は,培養細胞における細胞変性効果,蛍光抗体法および電子顕微鏡によるウイルス粒子の形態によって行った。分離ウイルスの3株を代表株として,その抗原性を血清中和試験によって比較したところ,若干の差異がみられた。下痢を示した14頭め子牛血清について,補体結合反応による血清学的調査では,急性期,回復期血清において1頭だけが有意な抗体上昇を示し,6頭が抗体価の低下を示した。なお,この14頭中10頭からロタウイルスが分離された。このことから,下痢の発現と抗体上昇の間では関連性が認められなかった。しかし,この牧場で同時期に生まれた32頭でのロタウイルス抗体では,5月と7月および7月と9月の間ではそれぞれ抗体価の変動に著しい変化はみられなかったが,9月と12月の間では26頭中8頭(30.8%)が抗体の上昇を示した。したがって本牧場では秋から冬にかけてウイルスの伝播があったものと推察された。
帯広畜産大学の論文
1984-12-25