リボフラビン生産の培養後期における菌集団の不均一性

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Eremothecium ashbyii(イノシトール要求株)によるリボフラビン生産において, 増殖制限基質であるイノシトール欠乏による増殖停止の後, その生産が活発に行なわれ, 見掛け上増殖非運動型を示す.このようなプロセス型の傾向を強化する一要因として, 増殖期におけるグルコースによるcatabolite repressionにあるが, これについては前報(J. Ferment. Technol., 50,716(1972))で報告した.ここでは, インノシトールによる増殖制限下の培養後期のリボフラビン生産において, その生成系(酵素合成系および酵素系)は不安定であること, また菌体の増殖停止は見掛けのものであって, 重量的に測定された細胞濃度は, 実際には死滅しつつある細胞, 自己消化しつつある細胞とそれより漏出する自己消化産物を利用して増殖する細胞より成る不均一集団の全体としての濃度であることを示す結果を得ており, この集団の中で増殖しつつある細胞のみがリボフラビン生産に関与していることを明らかにしたものである.すなわち, 疑似増殖停止期において, puromycin(最小発育阻止濃度)の添加によりリボフラビン生産はただちに阻害され(Fig. 2), また核酸アナログおよびactinomycin Dによりその生産が著しく阻害される(Fig. 3,4)ことより, このリボフラビン生成系(酵素系および酵素生成系)は非常に不安定であると考えられた.さらにDNA合成阻害剤であるhyroxyureaによりその生産が著しく阻害される(Fig. 5)ことにより, この培養後期におけるリボフラビン生成には増殖状態にあることに基づくことを明らかにし, かつ^<14>C-adenineのDNAへの取り込み実験(Fig. 7)より, 培養後期の疑似増殖停止期においても死滅細胞とその自己消化産物を資化して増殖している細胞より成る不均一集団であることを認めた.このDNAへの^<14>C-adenineの取り込み挙動の解析(Eqs. 1〜3,Fig. 8)を基にして, 培養後期の細胞集団のturnoverについて解析し(Fqs. 4-7), この疑似増殖停止期におけるリボフラビンの生産は死滅細胞に依存する増殖細胞に基づくものと仮定して計算(Eqs. 8〜10) した結果は, 実際の生産挙動とほぼ一致した(Fig. 10).さらに, このような見掛けの増殖非連動型の生産には, 増殖制限基質(エネルギー源6を含めて)の微量逐次添加がその生産性の向上に非常に有効であることを示した(Fig. 1,12,13).
社団法人日本生物工学会の論文
1974-10-25

リボフラビン生産の培養後期における菌集団の不均一性

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