周産期における母体および新生児尿中胎便様物質に関する研究
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概要
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羊水が母体血中へ流入すると,時に羊水塞栓症が発生し,新生児が気道内に羊水,特に胎便成分を吸引すると胎便吸引症候群が発症することが知られている. 著者は,分娩周辺期の母体および新生児尿中に検出される胎便様物質の指標(Urinary Meconial Index:UMI)に着目し,妊婦100名,産婦171名,新生児171名および羊水68例についてUMIを測定した.UMIの測定により,高UMIの出現頻度,高UMI出現時の分娩様式および分娩後の母児に対する影響について検討し,以下の知見を得た. 1)陣痛発来前の妊婦100名については全例UMIは0であり,陣痛発来後の産婦171名においては高UMIを11/173例(6.4%)に認めた.すなわち,陣痛が胎便成分の母体への流入を助長し,分娩時には流入した胎便成分が母体尿中に排泄されることがあつた. 2)破水(+)群の産婦63名には高UMIはなく,破水(-)群の産婦108名については高UMIを9/108例(8.3%)に認めた(p<0.01).このことは,臨床的破水がなくても胎便成分が母体へ流入する可能性があることを示唆した. 3)高UMI例における羊水混濁の出現頻度は,母体(27.3%);児(20.5%)と低UMI例(10.1%;9.9%)に比し有意に高く(p<0.05),所謂難産例においては母児共に胎便成分の流入率が高かつた. 4)高UMI例におけるCRPの陽性率は50%であり,また,早期高ビリルビン血症の出現率は27.3%を示し,低UMI例(25%;9.8%)よりも有意に高率であつた(p<0.05).従つて胎便成分の吸引は,所謂胎便吸引症候群などにみられる顕著な症状がなくても新生児の出生後の経過に影響を及ぼすことがある.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1985-10-01
著者
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