東海地方における充実性卵巣腫瘍の検討

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充実性卵巣腫瘍の予後は数ある婦人科の悪性疾患のなかでも最も悪いものの一つであり, より効果的な治療方法の確立がまたれる.しかるに一施設で経験出来る症例数は十分でなく, 予後を左右する因子別に分類すると治療効果の判定にふさわしいだけの症例数をあつめることは容易でない.今回, 私達は多施設の卵巣腫瘍に対する共同研究会を発足させ, 施設間の治療方法を出来るかぎり画一にし, 病理診断を同一病理医に同一基準で行つてもらい, 累積生存率に影響を与える因子の解析を行つた.参加施設は東海地方のセンター的な病院11施設で, これらの施設は名古屋大学の関連病院として, 長年人事の交流を行つて来た病院である.成績:1)原発性卵巣癌の臨床進行期別累積生存率はI期からIV期にいたるまでかなり著明な差異のあることが明確となつた.2)組織分類別に累積生存率を見ると症例数の多かつたI期及びIII期で共にムチン性嚢胞腺癌の生存率が漿液性嚢胞腺癌および類内膜癌より低く予後不良の印象を受けた.3)同一臨床進行期別に比較しても漿液性嚢胞腺癌と類内膜癌の生存率にはほとんど差がなく, 臨床的には同一範疇の疾患と考えてよい.4)組織分類別に組織の分化度により分化型と未分化型に分類し累積生存率を見たところ, 漿液性嚢胞腺癌と類内膜癌では明瞭に分化型のものと未分化型のものの生存率がことなり分化型の予後が良好であつたが, ムチン性嚢胞腺癌では分化型と未分化型のものの予後の差は著明ではなかつた.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1981-11-01

東海地方における充実性卵巣腫瘍の検討

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