正常妊婦・妊娠中毒症妊婦における血液流動学的研究

概要

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子宮胎盤系への血液供給は,母胎にとって,妊娠を維持する最も大切な機能であり,このためには円滑な血流の保持が必要である.そこで,血流量に最も大きな影響を与えると考えられる血液粘度が,妊娠によっていかに変化するか,また,胎盤循環不全を主病変とする妊娠中毒症では,血液粘度あいかなる状態にあるのかを検討し,以下の成績を得た.1)妊娠中の血液粘度は,常に非妊婦より低値で,妊娠の進行とともに妊娠6カ月まで下降し,最低値2.993±0.120cpとなり,以後10カ月まで徐々に増加した.2)血液粘度に最も大きな影響を与えるのは,Ht及びフィブリノーゲン量であった.妊娠経過に伴う血液粘度の変動は,Htと最も相関するが,妊娠末期では,フィブリノーゲン量が増加し,その影響を受ける.3)妊娠中毒症妊婦の血液粘度は,重症では,正常妊娠末期の妊婦に比し有意に高値(p<0.01)を示した.しかし,軽症では,正常妊娠末期の妊婦に比し有意差を認めなかった.4)妊娠中毒症重症妊婦を,症状別に,高血圧型,蛋白尿型,浮腫型に分けて,血液粘度を比較すると,高血圧型では最も高く(4.0059±0.3800cp),浮腫型では最も低く(2.7615±0.1169cp),蛋白尿型はその中間(3.2122±0.2424cp)に位置した.高血圧型妊婦の血液粘度は,正常妊娠末期の妊婦に比し有意に高値(p<0.001)を示した.妊娠中毒症妊婦の血液粘度も,Htと最も相関(r=0.8954)したが,フィブリノーゲン量とは相関しなかった.5)妊娠中毒症の治療として,高粘度の高血圧型には,輪液(dextran)療法,または降圧剤投与を行い,低粘度の浮腫型には,短期間の利尿剤(furosernide)投与を行った結果,輪液療法施行例では,血液粘度の改善,平均血圧の低下を認め,降圧剤投与例では,平均血圧の低下を認め,利尿剤投与例では,血液粘度の改善とともに浮腫の消失を認めた.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1982-05-01

正常妊婦・妊娠中毒症妊婦における血液流動学的研究

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