血液凝固第XIII因子の妊娠による生理的変化とその意義に関する研究

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妊娠中の血液凝固能を測定し,その中で特異な変動を示した第XIII因子について,その変動の生理学的意義を明らかにすべく検討し,以下の成績を得た.1)血液凝固第XII,IX,VIII,VII,X因子,prothrombin,fibrinogenおよびplasminogenは,妊娠の経過と共に上昇傾向を示した.またTEGによる全血凝固能は,妊娠により亢進した.第V因子およびplasmin活性は,妊娠中大きな変化を示さなかった.第XI因子は低下傾向を示した.各凝固因子は,分娩開始と共にさらに急激に変動した。2)第XIII因子については,carrier proteinであるXIII-Sは,非妊時94.0±16.0%から妊娠により増加傾向を示し、妊娠末期109±16.3%となったが,活性基であるXIII-Aは,非妊時97.5±17.5%から妊娠末期67.0±12.0%と低下傾向を示した.またXIII因子の活性値は,上記XIII-Aの蛋白量と同様の傾向となった.3)胎盤homogenate中には,XIII-Aを認めたがXIII-Sは存在しなかった.胎盤後血には,XIII-Sを認めたがXIII-Aは見られなかった.子宮静脈血では,母体末梢血中と有意な差がなかった.4)XIII-Aの胎盤における局在を,蛍光抗体法と,酵素抗体法にて検索した結果,XIII-Aはsynciti-otrophoblastに存在し,間質部,血管壁,胎児側には認められたかった。脱落膜部については,存在の有無を確立できなかった.以上の成績から,妊娠による凝固亢進状態の中で,血中XIII-Aが減少する生理的意義は,XIII-Aの減少によりfibrinのcross linkingを抑制し易溶解性とたり血液の流動性が保持される、一方局所(胎盤)では,XIII-Aが大量に存在して分娩時止血に関与しているものと推察された.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1982-04-01

血液凝固第XIII因子の妊娠による生理的変化とその意義に関する研究

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