発芽小麦中の脂質に対する1-ニトロナフタレンの影響

概要

論文の詳細を見る
ニトロ多環芳香族炭化水素(ニトロPAH)は化石燃料から誘導される環境汚染物質で,変異原性の強い物質として知られている。しかし,ニトロPAHの植物への影響については未だ知られていない。今回,ニトロPAHの一つである1-ニトロナフタレン(1-NN)を用いて植物への生育阻害と小麦発芽時の脂質の挙動およびクロロフィル濃度の変化について調べた。小麦をそれぞれ対照区,10,25および50ppm1-NN区に分けて1週間生育させた。小麦の発芽率は,10ppm区で最も高い値を示したが。25ppm,50ppmで生育阻害がみられた。中性脂質は,小麦芽生え部位で対照区と比較して10および25ppm区で増加したが,糖脂質は減少した。1-NN処理区芽生え部位の糖脂質およびリン脂質中のリノレン酸は対照区と比較して高い値を示した。50ppm処理区のホスファチジルエタノールアミン(PE)分子種の18:3-18:3-PE,18:2-18:3-PE,18:2-18:2-PEは芽生えおよび根部位において,対照区より高い値を示した。総クロロフィル量およびクロロフィルa量は10および25ppmの1-NN処理で上昇したが,50ppmの1-NN処理で減少した。1-NNは各部位において1-ナフチルアミンに還元された。以上の結果から10ppm1-NN処理により生育およびクロロフィル合成が促進されることが示唆されたが,それ以上の1-NN濃度で生育阻害がみられた。また,細胞膜の主成分である脂質についても糖脂質,リン脂質およびその分子種レベルの生体防御機能の活性化が確認された。
1993-10-25

発芽小麦中の脂質に対する1-ニトロナフタレンの影響

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク