北海道東部沿岸に生息するゼニガタアザラシ(Phoca vitulina stejnegeri)の重金属濃度について

概要

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わが国では,1950年から1970年代にかけて多くの公害病が発生し,大きな社会問題となった。海洋生態系において一度環境中に放出された重金属は,食物連鎖により,より高次の生物によって濃縮される。日本では生物中の重金属,とくに大型の哺乳類動物に関する報告はあまりされていない。そこで本研究では,北海道東部沿岸に生息するゼニガタアザラシ(Phoca vitulina stejnegeri)の肝臓,腎臓および筋肉における重金属(Cd,Cu,Fe,Hg,Mn,Zn)について分析を行ない,その濃度を明らかにした。有害元素であるCdとHgは,それぞれ腎臓,肝臓でもっとも高く,筋肉でいずれも低い値を示した。CdおよびHgの濃度はバックグランド値に近く,人間活動による影響は少ないと考えられる。必須元素であるCu,Fe,MnおよびZnはすべて肝臓で高く,筋肉で低い値を示す傾向にあった。各重金属濃度と年齢との相関関係を調べた結果,すべての組織でCdおよびHgの濃度が年齢と有意な相関関係にあった。元素間では肝臓中でHgとCuとの間に有意な相関関係が認められた。
1992-07-31