僧帽弁逆流動態に対する左室収縮機能の支配について

概要

論文の詳細を見る
僧帽弁逆流(MR)は背景に心筋疾患をもつことが多く,その道流動態は左室収縮性によって支配される可能性がある。そこで,連続渡ドップラー法によって記録したMR波形を時相的に分析し,左室収縮機能との関連について検討を加えた。各種MR43例をNYHA心機能分類によりA(class I, II), B(class III, IV)の2群に大別し,前駆血期における相対面積A_<PEP>(%),最大血流速度(PV)に達するまでの時間bと全逆流時間aとの比b/aを両群で対比したところ,B群では左室収縮機能(EF, %FS, mVcf)の低下に伴ってA_<PEP>(%)が増加しb/aが低値となった。このうち心不全を呈した8例について治療前後の値を比べると,心不全の改善に伴ってA_<PEP>(%)の減少とb/aの増加をみた。また24例に等尺性負荷を加えたところ,心筋疾患ではEFの減少とともにA_<PEP>(%)が増しb/aが低値となった。以上,心筋収縮機能の低下により前駆血期逆流分画は増し,PVの早期出現がみられ,さらに等尺性負荷にて同様の変化を生じた。ただし,慢性MRと等尺性負荷時におけるMR分画の決定因子は異なるものと思われる。
北里大学の論文
1990-10-31