クロメプロップのダイコン幼植物における植物ホルモン作用
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
除草剤クロメプロップ [2-(2,4-ジクロロ-3-メチルフェノキシ) プロピオンアニリド] のオーキシン作用をその代謝産物2-(2,4-ジクロロ-3-メチルフェノキシ) プロピオン酸 (DMPAと略す) および2,4-Dと比較して調べた。その際,^<14>C-クロメプロップおよび^<14>C-DMPAを用いてそれらの葉茎および根による吸収,体内移行および体内代謝を追跡し,オーキシン作用の発現の程度との関係を解析した。オーキシン活性をトキナシダイコン幼植物を用い,竹松哲夫の方法により子葉葉柄の開張度を以って測定した。10^<-5>M濃度のクロメプロップ,DMPA, 2,4-Dはいづれも顕著な活性を示した (第2,3図)。これを詳しくみると,根部処理ではDMPAと2,4-Dは顕著な活性を示したが,クロメプロップは殆ど示さなかった。しかし茎葉部処理ではクロメプロップが顕著な活性を示したのに対し,DMPAと2,4-Dの活性は小であった。一方,クロメプロップはDMPAに比べ,体内への浸入速度は大であり,特に葉茎からの場合著しく大きくDMPAと相違した (第1表)。根から茎葉への上方移動はクロメプロップに比べてDMPAが大であった (第2表,第4表)。茎葉から根への下方移行はわづかであったが,DMPAの移動が比較的多く認めれた (第5,6図)。これらの結果によりクロメプロップは葉茎処理の場合,またDMPAは根処理の場合に,活性発現部位である葉茎内に多量に検出されることが明らかとなった。^<14>C-クロメプロップと^<14>C-DMPAの体内代謝を調べた(第3表)。^<14>C-クロメプロップは根処理の場合,根内では大部分クロメプロップのままで残存し,また根から移行した茎葉部においてもクロメプロップとして検出される割合は大であった (第4表)。その際茎葉中に見出される代謝物DMPAの濃度は小であった(第5表)。一方^<14>C-DMPAが根に与えられた場合は速やかに水可溶画分に変化した。クロメプロップの葉茎処理の場合,その浸入速度は大であってクロメプロップの濃度は大であったが,代謝産物のDMPAの存在量も大であった。一方DMPAが根に与えられた場合,上方移行はクロメプロップより大であり,速やかに代謝されるがDMPAとして或る程度量茎葉に存在した。DMPA茎葉処理の場合,その代謝が速やかに行われると共に,吸収量が著しく小であったため結果として茎葉中DMPAの存在量は著しく小であった。生理活性の発現度はDMPAの茎葉中存在量と相関したので,クロメプロップそれ自体ではなくDMPAが活性形であると推定された。
- 日本雑草学会の論文
- 1990-07-27
著者
-
石塚 皓造
筑波大学応用生物化学系
-
ウォンワッタナ チャレムチャイ
Department of Biology, Srinakharinwirot University
-
ウォンワッタナ チャレムチャイ
Department Of Biology Srinakharinwirot University
-
スワナメク アンポーン
タイ国力セサート大学農学部
-
ウォンワッタナ チャレムチャイ
筑波大学応用生物化学系
-
Wongwattana Chalermchai
Department Of Biology Faculty Of Science Srinakharinwirot University
関連論文
- ベンスルフランメチル抵抗性ニンジン細胞のアセトラクテート合成酵素
- 各種植物のグルタミン合成酵素アイソザイムに対するグルホシネートの影響
- シメトリンとジメタメドリンのイネ品種およびタイヌビエの光合成と生育に対する異なる影響
- シコクビエのPropanil抵抗性機構 : 3. 葉緑体へのpropanil吸着と光合成電子伝達系阻害
- イネおよびタイヌビエの単離葉緑体における光化学反応に対するシメトリンの影響
- シメトリンとジメタメドリンのイネ品種およびタイヌビエの生育に対する異なる影響の発現機構
- 耐塩性vetiver grassの試験管内誘導
- クロメプロップと加水分解代謝物のオーキシン活性とトウモロコシオーキシン結合蛋白質との結合活性
- 抵抗性ニンジン培養細胞によるベンスルフロンメチルの吸収と解毒代謝
- 根部施用ベンスルフロンメチルのイネ品種における吸収,移行および代謝
- 73. ベンチオカーブおよびo-クロロフェノールの各地土壌中における脱塩素反応
- ピリブチガルブによるイネ根端部のスクワレン代謝阻害に及ぼすジメピペレートの影響
- イネ幼苗におけるベンスルフロンメチルの生育抑制に対するジメピペレートの薬害軽減機構
- クキタチナ (Brassica campestris) の試験管内大量迅速育苗と生産費シミュレーションによる生産法の改良の方向付け
- コムギ,メヒシバ間におけるオルベンカーブの選択作用機構
- 根部処理におけるbarbanの選択殺草機構
- 窒素条件を異にして生育させた植物に及ぼすグルボシネートの影響
- クロメプロップ代謝物(DMPA)によるダイコン幼根からの電解質漏出のエチレン作用阻害剤による軽減
- タウコギとアメリカセンダングサのベンスルフロンメチル感受性差異への葉面吸収および移行の関与
- クロメプロップを根部処理した後のダイコン幼苗でのホルモン作用の発現機構
- アジムスルフロンの水稲への作用に対するダイムロンおよびジメピペレートの軽減効果
- アオウキクサにおけるジフェニルエーテル系除草剤によるプロトポルフィリンIXの蓄積とその殺草活性
- ジフェニルエーテル系除草剤oxyfluorfenおよびbifenoxのアオウキクサに対する作用の特徴
- シコクビエのPropanil抵抗性機構 : 2.Propanilの光合成阻害からの回復
- 齢及び系統の異なるメヒシバのpropanil抵抗性機構
- ジフェニルエーテル系除草剤 oxyfluorfenおよび Chlomethoxynil の数種植物間における選択性機構
- ニンジン培養細胞のグルボシネート耐性とその機構
- 水稲とミズガヤツリにおけるアジムスルフロンの吸収, 移行および代謝の差異
- イネに対するシメトリンの作用および吸収・移行におよぼす温度の影響
- Naproanilideのイネ・タマガヤツリ間の選択殺草性とRNA生合成に対する作用
- イネ根部施用ベンスルフロンメチルの作用に対するジメピペレートの軽減効果
- イネ品種間におけるシメトリン選択作用機構
- マメ科植物の生長と根粒形成におよぼすNaClの影響.
- 32. グルホシネートのメヒシバ, ツユクサおよびシロザに対する殺草作用と吸収, 移行特性
- クロメプロップの生理作用に及ぼすカーバメート殺虫剤の影響
- クロメプロップのダイコン幼植物における植物ホルモン作用
- 各種植物体におけるクロメプロップの代謝
- 各種植物に対するクロメプロップの殺草活性と吸収・移行
- クロメプロップのイネ幼苗の生育抑制に対するジメピペレートによる軽減機構
- クロメプロップのオーキシン活性に対するジメピペレートの混合作用
- 発芽直後のイネ幼苗の生育に対するジメピペレートと数種除草剤との混合処理効果
- ピリブチガルブのトウモロコシおよびダイズにおけるスクワレン代謝に及ぼす影響
- ピリブチガルブのイネ科植物脂質代謝系に及ぼす影響
- プレチラクロールの選択性機構に関する研究 : 1.各種植物のプレチラクロール抵抗性とグルタチオン含量およびグルタチオンS-トランスフェラーゼ活性との関係
- プレチラクロールの選択性機構に関する研究 : 2.プレチラクロールの吸収,移行および代謝
- 明暗条件下におけるクロメトキシニルの作用と消失
- 硫安および2,4-DがピクロラムのEupatorium adenophorumによる吸収とその除草活性に及ぼす影響
- オキシフルオルフェン抵抗性ダイズ細胞のプロトポルフィリノーゲン酸化酵素阻害除草剤に対する交差抵抗性
- イネおよびタイヌビエのプレチラクロールを基質とするグルタチオンS-トランスフェラーゼの性質
- プレチラクロールまたはフェンクロリム処理によるイネおよびタイヌビエの生育とグルタチオンS-トランスフェラーゼ活性への影響
- ラッカセイ種子を用いた試験管内大量迅速育苗
- Artemisia vulgaris L.の防除に対するピクロラムの殺草活性に及ぼす2,4-Dの添加効果
- ベンスルフロンメチル, グリホサートおよびグルボシネートのニンジン細胞のアミノ酸レベルに対する効果
- ニンジン懸濁培養細胞由来ベンスルフロンメチル,グリホサートおよびグルホシネート耐性細胞の選抜
- イネ品種におけるシメトリンの吸収, 移行に及ぼす温度の影響
- ダイズにおける懸濁培養細胞を用いた除草剤抵抗性の選抜
- ニンジン懸濁細胞におけるベンスルフロンメチル耐性細胞の選抜およびアセトラクテート合成酵素の薬剤感受性の変化
- 61 イネ品種によるジメタメトリンの吸収, 移行, 代謝に及ぼす温度の影響