クロメプロップを根部処理した後のダイコン幼苗でのホルモン作用の発現機構
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概要
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著者らはすでに, ダイコン幼植物を供試材料としてクロメプロップの茎葉処理後の形態変化, エチレン放出量, ACC合成酵素活性, ACC酸化酵素活性などを測定し, クロメプロップは植物体内でDMPAへと変化し, DMPAがACC合成酵素を誘導することによってエチレン生成量を増加させ, そこで生成されたエチレンが, ダイコンの形態的変化を引き起こしている可能性が高いことを報告した。クロメプロップやDMPAが引き起こす生育抑制効果や形態変化の程度は茎葉処理後と根部処理後で大きく異なることが知られている。そしてその差は茎葉部, 根部での両薬剤の吸収, 移行, 代謝の差異によって引き起こされる, 茎葉部でのDMPA量の差に起因していると推定されている。本研究では, クロメプロップ, DMPAの根部処理による形態変化へのエチレンの関与について明らかにすること, さらに前報の茎葉処理での結果と比較し, 両処理後の形態異常の差異の発現要因についての知見を得ることを目的とした。1) クロメプロップを茎葉処理すると, 葉のカーリングや葉の葉柄間角度の増大が見られたが, 根部処理の場合, それらの作用はわずかであった。一方, DMPAを根部処理すると, 茎葉処理よりも顕著な葉のカーリングや葉の葉柄間角度の増大が見られた(Table 1)。2) DMPAを根部に処理した後に現れた上記の作用は, エチレン生成阻害剤(AOA)の前処理でわずかに, エチレン作用阻害剤(NBD)の後処理により顕著に抑えられた(Table 1)。3) クロメプロップ根部処理後のエチレン放出量はわずかに増大したが, 茎葉処理の場合と比較して1/7ほどであった。また, 茎葉処理の場合, クロメプロップとDMPAのエチレン生成誘導は量的, 時間的な差が僅かであるのに対し, 根部処理ではDMPAがより早くエチレン生成を誘導し, エチレン生成量も著しく多かった(Fig. 1)。4) クロメプロップ根部処理後のACC合成酵素活性はわずかに増大したが, 茎葉処理後の活性より低かった。一方, DMPA処理後のACC合成酵素活性はクロメプロップと比較するとかなり高く, また茎葉処理よりも根部処理の方が高かった(Fig. 2)。5) 根部処理でも茎葉処理同様, クロメプロップ, DMPAはACCからエチレンへの反応を触媒する酵素(ACC酸化酵素)に対して僅かに阻害的作用を示し, その誘導は起こらなかった(Table 2)。これらのことから, 根部処理でもクロメプロップやDMPAがACC合成酵素を誘導し, その結果植物体内にエチレンが蓄積することで形態変化を引き起こしているものと推察される。また, 茎葉と根部処理間で異なる形態異常の程度差異は, 茎葉, 根部でのクロメプロップとDMPAの吸収, 移行, 代謝の差によって引き起こされる, 茎葉部中のDMPA量の差に起因するエチレン生合成の量的, 時間的差が大きく関与しているものと推定される。
- 日本雑草学会の論文
- 1996-08-26
著者
-
春原 由香里
筑波大学応用生物化学系
-
臼井 健二
筑波大学応用生物化学系
-
松本 宏
筑波大学応用生物化学系
-
石塚 皓造
筑波大学応用生物化学系
-
石塚 皓造
筑波大 ・ 応生
-
春原 由香里
Doctoral Program In Life Sciences And Bioengineering Graduate School Of Life And Environmental Scien
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