イネ品種におけるシメトリンの吸収, 移行に及ぼす温度の影響
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概要
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除草剤シメトリンに対して日本型のイネは抵抗性を示し、インド型およびそれらの交雑品種の多くは感受性であることが知られている。しかし高温条件下においては日本型のイネにも薬害を生じることがあり、その発生機構が研究されてきている。本研究はイネ各品種の有するシメトリンに対する生理的性質が、温度変化に伴ってどのように変化するかを解析し、さらに薬害の発生との関連を調べようとしたものである。イネ品種を日本型(「日本晴」、「Bluebell」)インド型(「IR-8」、「CH-45」)およびそれらの交雑品種(「維新」、「統一」)から各2品種を選んで供試した。まず、これらの品種の中からシメトリンに対してより抵抗性である「日本晴」と、感受性の「IR-8」を用い、シメトリンの薬害の程度に及ぼす温度の影響を検討した。3葉期まで生育させた両品種を処理2目前にそれぞれの人工気象室(高温区:昼32℃、夜27℃、低温区:昼25℃、夜20℃)に移し、根部を所定濃度のシメトリン水溶液に1時間浸漬して吸収させ、その後の生育を調査した(第1図、第2図)。「日本晴」においては高濃度処理区ほど大きな生育阻害を受けたが10^<-3>M処理区においても、薬害からの回復が認められた。しかし、高温区は低温区に比べて薬害が強度にかつ処理後短期間内にあらわれた。「IR-8」においても高温区で低温区より薬害が大であった。また「IR-8」てば高低両温区とも「日本晴」に比べて薬害が強くあらわれ両品種間シメトリン抵抗性には差のあることが認められた。次に^<14>C標識シメトリンを用いて各品種の根部からのシメトリン吸収に及ぼす温度の影響について検討した(第1表)。その結果、シメトリンの吸収速度は品種間で異なり、日本型の2品種は他の品種に比べて高いことが明らかとなった。また、いずれの品種においても高温区における吸収が大であったが、温度上昇に伴う増加率には品種間でその傾向に差は認められなかった。同様にしてシメトリンの移行率に対する温度の影響を検討した(第2表)。供試したインド型品種および交雑品種においては、温度上昇に伴う移行率の増加は認められなかったが、日本型の品種である「日本晴」と「Blue bell」には温度上昇による移行率の増加がみられ、その傾向は処理後数時間以内が顕著であった。さらに、茎葉部に蓄積されるシメトリン由来の^<14>C濃度に対する温度の影響について検討した(第3表)。すべての品種において高温区でより高濃度の蓄積がみられた。これらのことから、吸収、移行量の増大に伴う体内濃度増加が高温条件下におけるシメトリンの薬害増大の主因の一つと考えられた。また、各品種の有する吸収、移行特性の温度変化に対す感応性はそれぞれ異なることが明らかとなり、日本型品種の「日本晴」および「Bluebell」は温度に対する感応性が他の供試品種より高いことか示された。このことによって日本型品種でも温度上昇に伴って急激な体内濃度上昇が起り、薬害を生ずるものと推察された。
- 日本雑草学会の論文
- 1984-09-27
著者
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