イネ品種間におけるシメトリン選択作用機構
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概要
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シメトリンに対するイネの抵抗性について品種間差が認められつつあることに着目し、イネ品種間におけるシメトリン選択作用機構を検討した。日本型品種の「日本晴」、インド型品種の「IR-8」、インド型品種と日本型品種の交雑品種である「維新」、それぞれを水耕法で3.2〜3.5葉期まで育てた後に、根部からシメトリンを吸収させ生育に及ぼす影響を調べた。用いたシメトリン処理濃度範囲において、「日本晴」と他の2品種との間にシメトリンの選択作用が認められた(第1図)。この選択作用がシメトリン吸収量の差に由来するのか、作用部位である茎葉部への移行率の差によるものかを検討した。3品種の根部から^<14>C一シメトリンを吸収させ、根部浸漬時間と^<14>C一シメトリン吸収量の関係を品種間で比較したところ、「日本晴」のシメトリン吸収能が最も高かった(第2図)。根部から吸収された^<14>C一シメトリン由来の^<14>Cの茎葉部への移行率を比較しても、3品種間で大きな差はなかった(第3図)。感受畦品種においてシメトリンの根による吸収量や根から茎葉部への移行率が特に高いという結果は得られなかった。^<14>C一シメトリンを根部に経時的に吸収させ、イネの茎葉部と根部それぞれにおける^<14>C放射能量を測定し、更に植物体より抽出した水溶性画分、ジクロルメタン可溶性画分およびメタノール不溶の抽出残渣画分における^<14>C分布割合を3品種間で比較することによりシメトリンの代謝を調べた。その結果、植物体内^<14>C濃度は「日本晴」において高く(第4、 5図)「日本晴」の比較的高いシメトリン吸収能が裏づけられた。植物体残澁画分および水溶性画分への^<14>C分布割合は他の2品種よりも「日本晴」の場合は著しく高く(第6図)、^<14>C-シメトリンをより速く代謝していることが推定された。^<14>C-シメトリンを24時間吸収させた植物体の茎葉部中と根部中の未変化シメトリン濃度を、ジクロルメタン可溶性画分^<14>CのTLC分析によって調べたところ、感受性2品種よりも「日本晴」ははるかに低い濃度を示した(第1表)。以上のことから、用いた3品種間に見られたシメトリン選択作用は、シメトリン吸収能や茎葉部移行率の品種間差に起因するものではなく、植物体内におけるシメトリン解毒代謝能の差に起因するであろうと結論づけた。
- 日本雑草学会の論文
- 1985-01-28
著者
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