シコクビエのPropanil抵抗性機構 : 2.Propanilの光合成阻害からの回復
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
Propanilの光合成及び呼吸への影響について検討することを目的とし、完全葉及び葉片を用い、その阻害活性及び回復の程度の植物種間差を調べるとともに、葉片におけるPropanilの挙動との比較を行った。 完全葉に4.59×10^<-4> M propanilを茎葉に浸漬処理したところ、イネ(Oryza Sativa (L.)cv. Nihonbare)、タイヌピエ(Echinoshloa oryzicola VASING.)及びシコクビエ(Eleusine coracana (L.) GAERTN.)の3植物ともに光合成及び呼吸が著しく阻害された。光合成についてはイネで24時間までに、シコクビエでは1週間以内に回復するのに対し、タイヌビエでは回復せず枯死に至った(Figure 1.)。呼吸については3植物ともにゆるやかに回復Lた。 完全葉での植物種間差を葉片を用いて再現できるかを調べたところ、Propanil処理濃度5×10^<-5> M、 10分間処理で3植物とも光合成が阻害されたが、イネで若干低かった。その後イネではすばやく回復し、シコクビエはゆっくりとした回復を見せたが、タイヌビエでは阻害からの回復が著しく遅かった(Figure 2(A))。しかしシコクビエとタイヌビエの回復速度は処理時間が長くなるにつれて顕著に遅くなった。(Figure 2(B),(C),(D))。次に^14C-propanil処理後の体内濃度変化を調べるため、葉片を10分間^14C-propanilに浸漬後、薬剤を含まだい液に移したところ、3植物ともに同様の^14C放射能量の放出が起り、1時間以内には蓄積量の大部分が体外へ排出した。その後シコクビエとタイヌビエでゆっくりとした排出が見られたが、イネではほとんど見られなかった(Figure 3)。処理時間を長くしても、3植物ともほぼ同程度の^14C一放射能量の蓄積を見せた(Figure 4 (A))。また溶出におけるイネと他2植物との差は、処理時間及び放置時間の延長とともに顕著となり、 MC一放射能量はイネにおいて多く残存Lていた(Figure 4(B),(C),(D))。以上のことから、propanilはイネにおいて他の2植物とは異なった存在状態にあるように思われた。 そこでPropanil 10分処理における代謝を調べたところ、propanilはイネにおいて1時間以内にすみやかに減少するのに対し、タイヌビエおよびシコクビエでは処理後6時間でも減少はほとんどみられなかった(Figure 5)。このことからイネにおいて^14C-放射能量がより多く残存するのは、propanilの代謝によることが示され、それによりすみやかな回復を示していることが明らかとなった。 以上のことから、葉片を用いてPropanilの蓄積量を同じにしても、イネでは完全葉においてだけでたく、葉片における短時間の反応でも代謝による解毒が低抗性の主要因となっていることが明らかとなった。一方、シコクビエでは完全葉においてゆっくりとした回復が見られたものの、葉片による試験では比較的短時間の処理においてのみ回復が見られた。
- 日本雑草学会の論文
- 1986-08-26
著者
関連論文
- ベンスルフランメチル抵抗性ニンジン細胞のアセトラクテート合成酵素
- 各種植物のグルタミン合成酵素アイソザイムに対するグルホシネートの影響
- シメトリンとジメタメドリンのイネ品種およびタイヌビエの光合成と生育に対する異なる影響
- シコクビエのPropanil抵抗性機構 : 3. 葉緑体へのpropanil吸着と光合成電子伝達系阻害
- イネおよびタイヌビエの単離葉緑体における光化学反応に対するシメトリンの影響
- "Weed Research" 第32巻1〜3号の内容紹介
- シメトリンとジメタメドリンのイネ品種およびタイヌビエの生育に対する異なる影響の発現機構
- "Weed Research"第34巻1〜3号の内容紹介
- "Weed Research" 第33巻1〜3号の内容紹介
- "Weed Research" 第30巻1〜3号の内容紹介
- "Weed Research" 第31巻1〜3号の内容紹介
- クロメプロップと加水分解代謝物のオーキシン活性とトウモロコシオーキシン結合蛋白質との結合活性
- 抵抗性ニンジン培養細胞によるベンスルフロンメチルの吸収と解毒代謝
- 根部施用ベンスルフロンメチルのイネ品種における吸収,移行および代謝
- 73. ベンチオカーブおよびo-クロロフェノールの各地土壌中における脱塩素反応
- ピリブチガルブによるイネ根端部のスクワレン代謝阻害に及ぼすジメピペレートの影響
- イネ幼苗におけるベンスルフロンメチルの生育抑制に対するジメピペレートの薬害軽減機構
- クキタチナ (Brassica campestris) の試験管内大量迅速育苗と生産費シミュレーションによる生産法の改良の方向付け
- コムギ,メヒシバ間におけるオルベンカーブの選択作用機構
- 根部処理におけるbarbanの選択殺草機構
- 窒素条件を異にして生育させた植物に及ぼすグルボシネートの影響
- クロメプロップ代謝物(DMPA)によるダイコン幼根からの電解質漏出のエチレン作用阻害剤による軽減
- タウコギとアメリカセンダングサのベンスルフロンメチル感受性差異への葉面吸収および移行の関与
- クロメプロップを根部処理した後のダイコン幼苗でのホルモン作用の発現機構
- アジムスルフロンの水稲への作用に対するダイムロンおよびジメピペレートの軽減効果
- アオウキクサにおけるジフェニルエーテル系除草剤によるプロトポルフィリンIXの蓄積とその殺草活性
- ジフェニルエーテル系除草剤oxyfluorfenおよびbifenoxのアオウキクサに対する作用の特徴
- シコクビエのPropanil抵抗性機構 : 2.Propanilの光合成阻害からの回復
- 齢及び系統の異なるメヒシバのpropanil抵抗性機構
- 31. シコクビエのプロパニル抵抗性機構 : IV 葉緑体へのプロパニルの吸着と光合成電子伝達阻害
- シコクビエの propanil 抵抗性機構
- 79 各種一年生植物に対するナプロアニリドの作用性とその体内代謝
- 63 令および生育地を異にするメヒシバのpropanil耐性と加水分解酵素
- 51 シコクビエのプロパニル抵抗性機構(III) プロパニルの光合成阻害からの回復
- 29 シコクビエのプロパニル抵抗性機構 II : プロパニルの体内挙動
- ジフェニルエーテル系除草剤 oxyfluorfenおよび Chlomethoxynil の数種植物間における選択性機構
- ニンジン培養細胞のグルボシネート耐性とその機構
- 水稲とミズガヤツリにおけるアジムスルフロンの吸収, 移行および代謝の差異
- イネに対するシメトリンの作用および吸収・移行におよぼす温度の影響
- Naproanilideのイネ・タマガヤツリ間の選択殺草性とRNA生合成に対する作用
- イネ根部施用ベンスルフロンメチルの作用に対するジメピペレートの軽減効果
- イネ品種間におけるシメトリン選択作用機構
- 32. グルホシネートのメヒシバ, ツユクサおよびシロザに対する殺草作用と吸収, 移行特性
- クロメプロップのダイコン幼植物における植物ホルモン作用
- クロメプロップのイネ幼苗の生育抑制に対するジメピペレートによる軽減機構
- クロメプロップのオーキシン活性に対するジメピペレートの混合作用
- 発芽直後のイネ幼苗の生育に対するジメピペレートと数種除草剤との混合処理効果
- ピリブチガルブのトウモロコシおよびダイズにおけるスクワレン代謝に及ぼす影響
- ピリブチガルブのイネ科植物脂質代謝系に及ぼす影響
- プレチラクロールの選択性機構に関する研究 : 1.各種植物のプレチラクロール抵抗性とグルタチオン含量およびグルタチオンS-トランスフェラーゼ活性との関係
- プレチラクロールの選択性機構に関する研究 : 2.プレチラクロールの吸収,移行および代謝
- 明暗条件下におけるクロメトキシニルの作用と消失
- オキシフルオルフェン抵抗性ダイズ細胞のプロトポルフィリノーゲン酸化酵素阻害除草剤に対する交差抵抗性
- イネおよびタイヌビエのプレチラクロールを基質とするグルタチオンS-トランスフェラーゼの性質
- プレチラクロールまたはフェンクロリム処理によるイネおよびタイヌビエの生育とグルタチオンS-トランスフェラーゼ活性への影響
- ラッカセイ種子を用いた試験管内大量迅速育苗
- ベンスルフロンメチル, グリホサートおよびグルボシネートのニンジン細胞のアミノ酸レベルに対する効果
- ニンジン懸濁培養細胞由来ベンスルフロンメチル,グリホサートおよびグルホシネート耐性細胞の選抜
- イネ品種におけるシメトリンの吸収, 移行に及ぼす温度の影響
- ダイズにおける懸濁培養細胞を用いた除草剤抵抗性の選抜
- ニンジン懸濁細胞におけるベンスルフロンメチル耐性細胞の選抜およびアセトラクテート合成酵素の薬剤感受性の変化
- 61 イネ品種によるジメタメトリンの吸収, 移行, 代謝に及ぼす温度の影響