林木の競争に関する研究(IV) : 生長にともなう林分内の個体順位の変動
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
一般に, 幹(重量, 材積)の度数分布は時間的経過とともに低い階級に属するものが多い型(L型)になる傾向が強い(第1図-a)。しかし幹がL型分布を示しても, 直径, 樹高ではその傾向はあまり強くない(第1図-b, 第2図)。L型分布になること, すなわち多数の小個体の中に小数の大個体を含む型は, 植物の生長が複利的であり, 個々の生長率がすこし違うと個体間の差は複利的に大きくなることに原因している。したがって, 生育の初期に相対的に大きな個体となったものは, この群落中で最後まで大個体として存在するはずで, 個体相互の順位の変動は時間経過とともに減少するであろうことが推測される。アカマツ苗を用いた小型間伐試験の結果から個体の順位変動を解析してみた。この試験では(1)無間伐, (2)本数にして50%を4回に分けて間伐, (3)同様に2回にわけて, (4)1回に間伐, の4処理を設けたが, 中間測定時の樹高について高い順に順位をつけ, 個体ごとにその順位の変動数を調べた(第1表)。その結果処理による差はあまりなく, 平均1個体あたりの順位変動は, 生育が進むにつれて双曲線的に減少することがわかった(第3図)。スギ苗を用いた類似の試験でも, 同様の結果となったが, 枝打ちをくり返す区では順位変動が永く続くようであった(第2表, 第4図)。また, 枝打区では, 樹高の度数分布の分散がすくなく, 枯損数もわずかであった(第5図)。スギの現実林でその間伐木56本について地上30cm直径の順位変動を調べたところ, 年数の経過とともに変動は減少し, 枝打ちが行なわれた年には変動が大きくなった(第3表, 第6図)。また上層から下層へ, 下層から上層へ順位変動の大きい個体はまれであった(第4表)。以上から次のようにいえる。一度上層木になった個体は下層木に追い抜かれて下層になることは普通は起らない。したがって個体の葉量に変化を与えないで個体間の競争を起させることは個体の順位に変化を与える機会を作ることではなく, 個体間の差を著しくすることである。下位のものが, 上位のものに追いつく機会を与えてやるためには, 上位個体に強い緑枝打ちを行なうなどの方法が考えられる。
- 一般社団法人日本森林学会の論文
- 1962-08-25
著者
関連論文
- 森林構造と光環境に関する研究(I) : ヤマハンノキ苗を用いた模型林分実験(1)
- 28年生スギ林およびヒノキ林の養分含有量
- 米国北西部の主要3植生帯の森林の現存量と生産量
- 320.施肥密度試験(第2報) : スギを用いた模型林分における施肥密度効果(立地)(第71回日本林学会大会)
- 319.施肥密度試験(第1報) : イイギリ苗を用いた模型林分における施肥, 密度効果(立地)(第71回日本林学会大会)
- 標高に伴うカラマツの葉の開葉と落葉の挙動
- ブナ天然林とヒノキ人工林の物質生産とその循環
- ササ群落に関する研究(II) : ミヤコザサの現存量および生産構造の季節変化
- 森林の生産構造に関する研究.XVIII. : 朝日岳周辺におけるシラベしま枯れ林の構造と一次生産
- ササ群落に関する研究(III) : 明るさとミヤコザサの現存量
- タイ国森林の第一次生産力
- 327 熱帯林の林分生長量の推定(第78回日本林学会大会)
- The Estimation of the Standing Crop of the Forest in Northeastern Thailand
- 森林の生産構造に関する研究(II) : シラカンバ幼令林における現存量の推定と生産力についての若干の解析
- 421.北アルプス焼岳でみられる植生遷移(立地)(第71回日本林学会大会)
- 森林の生産構造に関する研究(II) : シラカンバ幼令林における現存量の推定と生産力についての若干の解析
- シンポジウムに対するコメント : 林学会に望むこと(林学研究のあり方を考える-現場からの問題提起に答えて-)
- 葉緑素計SPAD-501を用いて測定した樹木の葉のクロロフィル濃度
- 森林の生産構造に関する研究(XX) : ハンノキ幼齢林の一次生産力
- 森林の生産構造に関する研究(XIX) : シラカンバ林のクロロフィル量とその分布
- 森林の現存量 : とくにわが国の森林の葉量について
- ○ヒノキ林-その生態と天然更新, 四手井綱英, 赤井龍男, 斎藤秀樹, 河原輝彦共著, 375頁, 272図, (写真含む), 62表, 地球社, 東京, 1974年, 3,800円
- 日本の植物相と植生NUMATA, M., ed. : The Flora and Vegetation of Japan.(英文), 304pp, 31表, 109図(写真含む), 講談社, 東京, 1974年, 4,000円。
- 松と人生, 四手井綱英, 佐野宗一編著, 297ページ, 130図(写真を含む), 15表, 明玄書房, 東京, 1973年, 2300円
- 〇世界の一次生産力を模型化する
- ○新しい天然更新技術, 柳沢聰雄, 山谷孝一, 中野實, 前田禎三, 宮川清, 加藤亮助, 尾方信夫, A5判340ページ, 図63,表78,写真39,創文, 東京, 1971年, 1,400円(〒140円)
- 森林の生産構造に関する研究(XVII) : 林冠内での葉の比面積の垂直的変化
- ○南西カンボジヤの熱帯降雨林の生産生態学. : II. 常緑季節林の同化生産
- ○南西カンボジヤの熱帯降雨林の生産生態学. I. 植物現存量
- ○縞枯山の植生についての生態学的ならびに生理学的研究VI.Abies幼樹群落の生長と物質生産
- 林冠の構造とその一次生産力
- 森林の生産構造に関する研究(XV) : ブナ人工林の一次生産
- 森林の生産構造に関する研究(XIV) : コジイ幼齢林の一次生産についての第3回報告
- 森林の生産構造に関する研究(XIII) : コジイほか2,3の常緑樹林における落葉枝量の季節変化
- 森林の生産構造に関する研究(XII) : 富士山のシラビソ天然林の一次生産
- 降水中にふくまれる放射能物質による苗畑苗木の汚染について
- 118. クロマツのツギ木の水分生理について(第67回日本林学大会プログラム)
- 森林の生産構造に関する研究(VI) : 足場丸太生産スギ林の生産力について
- 森林の生産構造に関する研究(V) : モリシマアカシヤ人工林の生産力について
- 森林の生産構造に関する研究(IV) : 林分および単木の葉量についての若干の考察
- 森林の生産構造に関する研究(III) : コジイ幼令林における現存量の推定と生産力についての若干の解析
- 小径木間伐に関する研究(V) : 間伐後6年間のスギ林の林況および現存量の変化について
- スギ幼齢林の一次生産力とその推定法の検討
- ヒノキ林地下部の生産と構造(I) : 樹根解析による根の生産量の推定
- カンレンボク小型林分の葉令に関する2,3の考察
- 縄文文化と雪
- 日本雪氷学会40年の歩み
- On the Biomass of Soil Animals Found in Various Types of Forests in Thailand
- 439 除草剤散布の土壌動物に与える影響(第77回日本林学会大会講演要旨)
- 116. 森林の落葉層および、表層土中に棲息する無脊椎動物の、個体数および現存量の季節変動について(第76回日本林学会大会講演要旨)
- 京都付近のモミ, スギ, アカマツおよび混交広葉樹林の落葉層および土壌中の動物相について
- 509. 森林落葉層の動物相について(第74回日本林学会大会講演要旨)
- 628.落葉・落枝の分解に働く鞘翅目昆虫について(予報)(第72回日本林学会大会)
- 現場の技術者の林学会離れに就いて(リレーメッセージ研究から現場から(5))
- 森林資源と木材利用(日本林学会・日本木材学会合同シンポジウム記録)
- 1. 林地の地力維持 : 生態学的観点からの地力問題(第4回森林立地懇話会総会)
- 京都府芦生にあるスギ人工林の二次師部生産速度
- 〇環境アセスメント, 原則と方法, 島津康男(訳), Environmental Intact Assessment "Procedures and Principles", 189ページ, 環境情報科学センター, 東京, 1975,1,200円
- アカマツの種子におよぼす動物の影響 : II.種子の生産と稚樹の形成
- アカマツの種子におよぼす動物の影響(I)
- リュウキュウマツの核型分析
- 森林生態系における養分の循環について(I) : 個体および林分の地上部の養分量
- 412 マツ類の球果成熟期間の短縮について(III)(S)(第78回日本林学会大会)
- 328 樹木花粉の超低温貯蔵に関する研究(VI) : Cedrus花粉の予備凍結効果(S)(第78回日本林学会大会)
- Applied Scientific Research Corporation of Thailand の動向について
- 703.スギ母樹別造林地におけるスギ葉角および球果苞鱗片の突出した角度の変異について : (予報)(第72回日本林学会大会)
- ジベレリンによるメタセコイア, スギの開花について(第II・III報)
- 619.スギ・メタセコイアのジベレリン処理による開花と交配試験について
- 618.スギの開花に及ぼすジベレリン処理の適期について
- ジベレリンによるメタセコイア, スギの開花について(第I報)
- 陽光量と樹木の生育に関する研究(I) : 2、3の落葉広葉樹苗木の庇陰効果について
- ツバキ林の生産構造と物質生産量
- 土は植物を,植物は土を育てる
- 321 シラベ天然林の純生産量(S)(第78回日本林学会大会)
- 322 カラマツ壮齢林の物質生産の垂直分布(S)(第78回日本林学会大会)
- 森林の生産構造に関する研究(X) : 無間伐の45年生ヒノキ林の生産力
- 409 ヒノキ高密度林分の生産力(第77回日本林学会大会講演要旨)
- 329. コジイ幼齢林の生産力(第75回日本林学会大会講演要旨)
- 328. スギ品種の生長特性(第1報) : ヘイサ後林分の場合(第75回日本林学会大会講演要旨)
- 205. 樹種混交の増産に及ぼす効果
- 林木の競争に関する研究(V) : さしつけ密度とスギのサシキ苗の生長
- 数量的間伐に関する生態学的研究
- 林木の競争に関する研究(III) : アカマツ幼樹を用いた小型林分での機械的な間伐試験
- 森林の生産構造に関する研究(IX) : 高立木密度の幼齢スギ林の生産力
- 森林の生産構造に関する研究(VIII) : 立木密度の高いモリシマアカシヤ林の生産力
- ○2個のPopulus林の構造, 生物体量と生産力
- ○根の生産量と純生産力の推定
- 北Quebecにおけるblack spruce無間伐林の葉量と幹材生産量
- 林木の競争に関する研究(IV) : 生長にともなう林分内の個体順位の変動
- 森林の生産構造に関する研究(I)アキニレ稚樹林における葉量の時期的変化とその乾物生産
- 522.アカマツ幼樹を用いた模型林分における間伐試験(造林)(第71回日本林学会大会)
- 森林の生産構造に関する研究(I) : アキニレ稚樹林における葉量の時期的変化とその乾物生産
- 721.材積生産構造図(仮稱)の提案(2) : その利用方法と検討
- 720.材積生産構造図(仮稱)の提案(1) : その意味と作図方法
- 材木の競爭に関する研究(II) : スギ苗で仕立てた模型林分での間伐試験
- 204. 模型林分による間伐試験(3)
- 林木の競争に関する研究(I) : 種間競争に及ぼす巣うえの効果
- 116. 模型林分による間伐試験(2)(造林)(第68回日本林学会大会)
- 135. 強度の枝打ちによる個体成長よくせいが林分成長に及ぼす影響(第67回日本林学大会プログラム)
- 134. 間伐の模型実験(第1報)(第67回日本林学大会プログラム)