森林の生産構造に関する研究(III) : コジイ幼令林における現存量の推定と生産力についての若干の解析
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
熊本市東北部のコジイ萌芽幼令林において, 現存量を推定し, その生産構造について若干の解析を加えた。この林は10年生で平均樹高4〜5mであるが, 無手入林の一部を小面積全伐し, 層別刈取法によって幹, 枝, 葉の重量や幹の材積, 生長量, 葉面積などを測定した(第1表)。この全伐区の立木のうち約1/4はアラカシであったが, 全葉量はhaあたりにして乾重11.4ton, 面積(片面)12.5haであり, 幹材積生長量は17.5m^3/ha・yearとなった。根やいろいろな損失を無視したミカケの当年の乾物生産量は16.5ton/ha・yearと推定された。また1m^2の葉が1週間に生産する乾物量は4gと推定された。葉量の垂直分布は1〜2層に集中する型を示し, 林冠層下の照度は, 林冠層上のそれの0.7%にすぎず, 葉層の吸光係数は, 0.40と算定された(第1,2図)。個体ごとの胸高断面積と, 各部重量, 幹材積幹, 生長量などとの間の相対生長関係を用いて, 既に設定されていた萌芽整理立木密度区の現存量を推定した(第3,4,6図)。その結果, いろいろな部分の量や生長量はいずれも立木密度が高いほど大きかつた(第8図, 第2表)。しかし, これらは厳密な意味での密度効果ではなく, 低密度区の現存量が萌芽整理のため減少せしめられている影響の方が大きいのではないかと思われる。個体ごとの胸高直径と, 地上部非同化部分の相対生長関係は, 数種の常緑広葉樹共通のものが求められるようである(第5図)。また全地上部に対する幹の量は, この測定資料の範囲ではほぼ一定であったが, 葉の占める比率は地上部が大きくなるほど小さく, 逆に枝の比率は大きくなる傾向がある(第7図)。幹材積に関する3/2乗則線はv_S=2.416×10^4ρ^<-1.53>また地上部重に関する3/2乗則線はw_T=1.326×10^7ρ^<-1.5>と推定された。ρはhaあたり立木本数, v_S, w_Tは平均幹材積(m^3), 平均地上部乾重(kg)である(第9図)。1kgの葉乾重の1年間の幹材積生産はコジイで1.65dm^3,アラカシで1.12dm^2であった(第10図)。
- 1962-12-25
著者
関連論文
- 28年生スギ林およびヒノキ林の養分含有量
- 320.施肥密度試験(第2報) : スギを用いた模型林分における施肥密度効果(立地)(第71回日本林学会大会)
- 標高に伴うカラマツの葉の開葉と落葉の挙動
- ブナ天然林とヒノキ人工林の物質生産とその循環
- ササ群落に関する研究(II) : ミヤコザサの現存量および生産構造の季節変化
- 森林の生産構造に関する研究.XVIII. : 朝日岳周辺におけるシラベしま枯れ林の構造と一次生産
- ササ群落に関する研究(III) : 明るさとミヤコザサの現存量
- 森林の生産構造に関する研究(II) : シラカンバ幼令林における現存量の推定と生産力についての若干の解析
- 森林の生産構造に関する研究(II) : シラカンバ幼令林における現存量の推定と生産力についての若干の解析
- シンポジウムに対するコメント : 林学会に望むこと(林学研究のあり方を考える-現場からの問題提起に答えて-)
- 葉緑素計SPAD-501を用いて測定した樹木の葉のクロロフィル濃度
- 森林の生産構造に関する研究(XX) : ハンノキ幼齢林の一次生産力
- 森林の生産構造に関する研究(XIX) : シラカンバ林のクロロフィル量とその分布
- 森林の現存量 : とくにわが国の森林の葉量について
- ○ヒノキ林-その生態と天然更新, 四手井綱英, 赤井龍男, 斎藤秀樹, 河原輝彦共著, 375頁, 272図, (写真含む), 62表, 地球社, 東京, 1974年, 3,800円
- 日本の植物相と植生NUMATA, M., ed. : The Flora and Vegetation of Japan.(英文), 304pp, 31表, 109図(写真含む), 講談社, 東京, 1974年, 4,000円。
- 松と人生, 四手井綱英, 佐野宗一編著, 297ページ, 130図(写真を含む), 15表, 明玄書房, 東京, 1973年, 2300円
- 〇世界の一次生産力を模型化する
- ○新しい天然更新技術, 柳沢聰雄, 山谷孝一, 中野實, 前田禎三, 宮川清, 加藤亮助, 尾方信夫, A5判340ページ, 図63,表78,写真39,創文, 東京, 1971年, 1,400円(〒140円)
- 森林の生産構造に関する研究(XVII) : 林冠内での葉の比面積の垂直的変化
- ○南西カンボジヤの熱帯降雨林の生産生態学. : II. 常緑季節林の同化生産
- ○南西カンボジヤの熱帯降雨林の生産生態学. I. 植物現存量
- ○縞枯山の植生についての生態学的ならびに生理学的研究VI.Abies幼樹群落の生長と物質生産
- 林冠の構造とその一次生産力
- 森林の生産構造に関する研究(XV) : ブナ人工林の一次生産
- 森林の生産構造に関する研究(XIV) : コジイ幼齢林の一次生産についての第3回報告
- 森林の生産構造に関する研究(XIII) : コジイほか2,3の常緑樹林における落葉枝量の季節変化
- 森林の生産構造に関する研究(XII) : 富士山のシラビソ天然林の一次生産
- 森林の生産構造に関する研究(VI) : 足場丸太生産スギ林の生産力について
- 森林の生産構造に関する研究(V) : モリシマアカシヤ人工林の生産力について
- 森林の生産構造に関する研究(IV) : 林分および単木の葉量についての若干の考察
- 森林の生産構造に関する研究(III) : コジイ幼令林における現存量の推定と生産力についての若干の解析
- 土は植物を,植物は土を育てる
- 321 シラベ天然林の純生産量(S)(第78回日本林学会大会)
- 322 カラマツ壮齢林の物質生産の垂直分布(S)(第78回日本林学会大会)
- C.T.M処理によるスギ・ヒノキ苗の長期貯蔵試験
- クロマツの枯死木と健全木の, 根株からの根系発生経過の違い
- 樹木苗の霧培養試作装置について
- 49 九州産主要樹種の実験生態学的研究(第4報) : 飫肥地方のスギ各品種の樹液の屈折率の差異に就て
- 森林の生産構造に関する研究(X) : 無間伐の45年生ヒノキ林の生産力
- 2,3の除草剤によるススキ群落の抑草効果について
- 林地におけるススキ群落の生態的特性と抑草目標について
- 45. 2, 3除草剤によるススキ群落の抑草効果について
- 44. 林地におけるススキ群落の生態的特性と抑草目標について若干の考慮
- 317 サシスギ幼齢木の枝打による着葉量と生長状態(第78回日本林学会大会)
- 409 ヒノキ高密度林分の生産力(第77回日本林学会大会講演要旨)
- 329. コジイ幼齢林の生産力(第75回日本林学会大会講演要旨)
- 328. スギ品種の生長特性(第1報) : ヘイサ後林分の場合(第75回日本林学会大会講演要旨)
- 205. 樹種混交の増産に及ぼす効果
- 150. 九州におけるスギ優良品種の成長過程及びその林分成長量の差異について(第64回日本林学会大会)(ON THE 64 th MEETING OF THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY)
- 林木の競争に関する研究(V) : さしつけ密度とスギのサシキ苗の生長
- 数量的間伐に関する生態学的研究
- 林木の競争に関する研究(III) : アカマツ幼樹を用いた小型林分での機械的な間伐試験
- 森林の生産構造に関する研究(IX) : 高立木密度の幼齢スギ林の生産力
- 森林の生産構造に関する研究(VIII) : 立木密度の高いモリシマアカシヤ林の生産力
- ○2個のPopulus林の構造, 生物体量と生産力
- ○根の生産量と純生産力の推定
- 北Quebecにおけるblack spruce無間伐林の葉量と幹材生産量
- 林木の競争に関する研究(IV) : 生長にともなう林分内の個体順位の変動
- 森林の生産構造に関する研究(I)アキニレ稚樹林における葉量の時期的変化とその乾物生産
- 522.アカマツ幼樹を用いた模型林分における間伐試験(造林)(第71回日本林学会大会)
- 森林の生産構造に関する研究(I) : アキニレ稚樹林における葉量の時期的変化とその乾物生産
- 721.材積生産構造図(仮稱)の提案(2) : その利用方法と検討
- 720.材積生産構造図(仮稱)の提案(1) : その意味と作図方法
- 材木の競爭に関する研究(II) : スギ苗で仕立てた模型林分での間伐試験
- 204. 模型林分による間伐試験(3)
- 林木の競争に関する研究(I) : 種間競争に及ぼす巣うえの効果
- 116. 模型林分による間伐試験(2)(造林)(第68回日本林学会大会)
- 135. 強度の枝打ちによる個体成長よくせいが林分成長に及ぼす影響(第67回日本林学大会プログラム)
- 134. 間伐の模型実験(第1報)(第67回日本林学大会プログラム)