正常月経周期,妊娠,分娩時のオピオイドペプチド動態の研究
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概要
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産婦人科領域における機能的各相すなわち,月経周期,妊娠,分娩などと,血中エンドルフィンとの相関を研究し,その生理的作用ならびに,臨床的意義を検討する目的で,正常月経周期,妊娠中,分娩時のimmunoreactive(IR)-β-lipotropin(LPH),IR-β-endorphin(EP),adrenocorticotropic-hormon(ACTH)の動態をradioimmunoassay(RIA)法により直接測定し以下の結果を得た. 1)正常月経周期においては,月経期(n=7),卵胞期(n=18),排卵期(n=12),黄体期(n=16)の4時期におげる血中β-EP,ACTHは,共に黄体期に高値を示し,卵胞期に低値を示した. β-LPHについては,同じく黄体期に高い傾向を示し,月経期に最も高値を示した.β-EP,ACTHの黄体期と卵胞期間の値には,有意差(p<0.05)を認め,β-LPHについては,各期間に有意差を認めなかつた. 2)正常妊娠経過の妊婦を,妊婦第I期(6週〜13週),妊娠第II期(14週〜27週),妊娠第III期(28週〜40週)の3群に分けて測定したところ,各期における血中IR-βLPH,IR-β-EPの測定値は,妊娠が進行するにつれて,増加する傾向を示した.各期各々比較したところ,β-EPにおいては妊娠第I期と第III期間に有意差(p<0.01)を認め,第I期と第II期間においても有意差(p<0.05)を認めた. β-LPHにおいては,各期間に有意差を認めなかつた. 3)正常の妊娠経過をたどり,分娩に到つた症例(n=7)を分娩時子宮頚部開大5cmと10cmの2時点に分け,血中IR-β-LPHとIR-β-EPを測定したところ両者とも妊娠第III期に比べ有意に,増加する傾向を示し,子宮頚部開大10cmにて最大値を示した.各期各々比較したところ,β-EPにおいては,妊娠第III期と子宮頚部5cm開大時間において有意差(p<0.005)を認め,妊娠第III期と子宮頚部10cm開大時間においても,有意差(p<0.005)を認めた.子宮頚部開大5cmと子宮頚部開大10cm間においては,有意差を認めなかつた.β-LPHにおいては,妊娠第III期と子宮頚部5cm開大間において,有意差(p<0.05)を認め,妊娠第III期と子宮頚部10cm開大間において,有意差(p<0.005)を認めた.子宮頚部開大5cmと子宮頚部開大10cm間においては有意差を認めなかつた. 以上の結果より正常月経周期においてβ-LPH,β-EP,ACTHは,黄体期に高値を示す傾向にあることが判明し,その機序については,他のゴナドトロビンならびに,卵巣ステロイドホルモンとの関連が示唆された. 妊娠経過に伴い,β-LPH,β-EPが漸次増加する傾向を示した事は,妊娠維持に関係する他のホルモンとの関連が示唆され,分娩時急増する傾向が見られた事は,エンドルフィンの鎮痛作用のみでなく,他の生理作用を示唆する興味深い知見であると思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1985-09-01
著者
-
飯塚 理八
慶応義塾大
-
牧野 恒久
慶応義塾大学医学部産婦人科学教室
-
卓山 誉千
慶應義塾大学医学部産婦人科学教室
-
近藤 善二郎
慶応義塾大学医学部産婦人科学教室
-
吉村 慎一
慶応義塾大学医学部産婦人科学教室
-
飯塚 理八
慶慮大
-
卓山 誉千
慶応義塾大学医学部産婦人科学教室
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