胎児鏡の開発とその臨床的応用

概要

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近代産科学における一つの大きな目標は,子宮内における胎児生理の情報をより詳細に得ることである.1972年以来,わが産婦人科学教室においても,200例以上の羊水穿刺が行われ,出生前に遺伝疾患の診断の重要性が確認された.しかし,羊水穿刺では,単一遺伝子による疾患の表現性を欠くこと,90%以上の胎児由来の細胞が培養によっても発育しないこと,培養に長い期間を要するなどの欠点があり,子宮腔内より直接胎児の情報を得る手段を開発する必要性が指摘されてきた.産婦人科領域で使用される内視鏡の中で,羊水腔内に挿入し,胎児を直視できる胎児鏡は,妊娠子宮内より直接情報を得ることが期待できる.我々は,新しく開発した胎児鏡を用い,胎児鏡の将来における可能性はもちろん,臨床的な応用,禁忌につき考察した.これらの研究により,胎児鏡の将来は,胎児鏡の手技の習熟とともに,胎児鏡より得た標本に対し,より正確なデーターを得る研究,分析技術の進歩に依存するところが大きいことが示唆された.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1982-09-01