卵巣癌診断におけるCA54/61の評価 : 5施設の共同研究結果を中心に

概要

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高分子ムチン糖蛋白上の糖鎖を認識する2種類のモノクローナル抗体MA54およびMA61を,それぞれビーズ不溶化抗体, HRP標識抗体として用いた1 step double determinants enzyme-immunoassay (キット名: MKS-15)により, 本測定系の認識する抗原(CA54/61と命名)量を5施設の血清を対象に測定した. 対象とした被検血清は, 健常人348症例, 卵巣腫瘍患者359症例, 子宮腫瘍352症例, 妊婦318症例, 婦人科以外の疾患133症例の計1,510例である. その結果, MKS-15の同時および測定日間再現性のCVは2.5〜7.5%であり, 添加回収試験, 希釈試験も満足のいく結果で, 血清測定系として信頼に足るものであることが判明した. また健常人のCA54/61値は女性で高値を示す傾向が見られたので, 女性の測定値を基に本測定系のカットオフ値を20U/ml (=平均+3SD)に設定した. 各種疾患におけるCA54/61値を測定したところ,卵巣癌μで56%(106例/189例)と最も高い陽性率が得られたので,各種卵巣腫瘍におけるCA54/61値を測定したところ, 漿液性嚢胞腺癌, ムチン性嚢胞腺癌, 類中腎癌, 類内膜癌, 未分化癌, 転移癌の各陽性率は各々63%(45/72), 55%(21/38), 52%(12/23), 38%(6/16), 55%(6/11), 62%(8/13)であり, 類内膜癌を除いては組織型に関係なく50%以上の陽性率を示した. とくにムチン性腺癌でもその他の癌とほぼ同程度の陽性率が得られた. 一方, 良性卵巣腫瘍および中間群では, 漿液性嚢胞腺腫および類皮嚢胞腫では陽性例は認められなかつたが, ムチン性嚢胞腺腫では30例中2例(7%)に高値を示す症例が存在した. ムチン性嚢胞腺癌における陽性率が低いと言うCA125の短所を補う新たな測定系としての有用性が強く示唆された.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1989-11-01

卵巣癌診断におけるCA54/61の評価 : 5施設の共同研究結果を中心に

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