卵巣腫瘍の臨床病理学的研究
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概要
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大阪大学病院における過去18年間の卵巣腫瘤504例について臨床病理学的分析を行い,一部腫瘍については種々マーカー物質について検討された. 卵巣腫瘍の大部分は良性嚢胞性で,類皮嚢胞腫191例,漿液性嚢胞腺腫106例,ムチン性嚢胞腺腫68例である.中間群および悪性群に属するものは卵巣表面上皮性のものが多く71例で,特に悪性群は高齢者に多い.ほかに顆粒膜細胞腫,男化腫瘍,類皮嚢胞腫に合併した願粘膜細胞腫,若年性顧粘膜細胞腫などが稀に見られる.胚細胞性腫瘍としては若年者に未分化駆細魑腫(5例),emmbryonal carcinoma (樋口・加藤)がやや多く,高齢老では稀な類皮嚢胞腫の悪性化,即ち島状および甲状腺腫型カノレチノイド,扇平上皮癌,腺癌,悪性線維性組織球腫だとが見られる.卵巣腫瘍と妊娠との合併は類皮嚢胞腫,線維腫で多く,悪性腫瘍では極めて稀である.卵巣腫瘍の両側陸発生頻度は良性群,中間群の11%に比し,悪性群セは20%と高い.卵巣腫瘍は腹部腫瘤形成以外は無症状のことが多いが,最近ステロイド,アミン,蛋自ホルモン,その他のマ一カー物質が診断治療に応用されている.免疫組織学的にマーカー物質の局在を検索するとCEAはムチソ性腫瘍と類皮嚢胞癌に,hCGは前記腫瘍の一部と絨毛成分に,AFPはembryonal carcinomaに,カルチトニンはカルチノイドに夫々認められ,組織型診断に重要な役割を果すこともある.治療は悪性度の低い一部を除いて,原則として根治手術と化学療法が用いられている.予後は中間群およぴムチン性Ia期癌を除いて極めて悪く,経過も早いが,稀に長期生存例も認められる.中間群では予後不良な場合でも非常に緩慢な経過をとることが多い.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1980-01-01
著者
-
上田 外幸
大阪大学医学部
-
倉智 敬一
大阪大学医学部産婦人科学教室
-
倉智 敬一
大阪大
-
山崎 正人
大阪大学医学部産婦人科学教室
-
上田 外幸
大阪大・産婦人科
-
井上 正樹
大阪大学医学部産婦人科学教室
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