婦人科悪性腫瘍患者末梢血Large Granular Lymphocytes (LGL) に関する研究
概要
婦人科悪性腫瘍患者70名および対照群として健常成人28名,子宮筋腫患者26名,良性卵巣腫瘍患者25名のNatural killer(NK)およびKiller(K)細胞群を含むと報告されているlarge granular lymphocytes(LGL)の末梢血リンパ球(PBL)中の比率,末梢血白血球(WBC)中の比率およびLGL数を検索し以下の結果を得た.1)健常成人,子宮筋腫患者,良性卵巣腫瘍患者の3群のLGL/PBL,LGL/WBCおよびLGL数には全く差を認めなかった.また対照群の20歳代から60歳代に到る年代別では,LGL/PBLは加齢による上昇を認めるも各年代問で有意差は認められなかった.但し,LGL数では30歳代および40歳代と50歳代以上の群の間に,またLGL/WBCでも30歳代と50歳代以上の群の間に僅かながら有意差を認めた.2)前癌ないし非浸潤悪性腫瘍患者(子宮頚部高度異形成上皮および上皮内癌,子宮内膜異型増殖症)ではLGL/PBLは有意に低下し,浸潤悪性腫瘍患者(子宮頚癌Ia-IV期,子宮内膜癌,子宮肉腫,卵巣癌,外陰癌)ではLGL/PBLは有意に上昇した.浸潤悪性腫瘍の発生臓器によるLGL/PBLの差は認められなかった.3)浸潤癌の進行期別では子宮頚癌,卵巣癌ともに進行期別有意差は認められなかった.子宮頚癌リソバ節転移症例と非転移症例の間には有意差は認められなかった.4)卵巣癌8例中6例では明らかなLGL/PBL値の上昇が認められた.結論として,LGLが前癌ないし非浸潤癌患者で低下傾向を示し,浸潤悪性腫瘍患者で増加することの意義は現在未だ不明である.しかし浸潤悪性腫瘍愚老でLGL/PBLが有意に上昇することは特に早期診断の困難な卵巣癌の有力な補助診断法の1つとして用いられるものと考えられる.