多嚢胞卵巣症例の下垂体性ゴナドトロピン分泌病態について

元データ 1976-12-01 社団法人日本産科婦人科学会

概要

9例の多嚢胞卵巣患者について連日採血し血清LH, FSHを2抗体法を用いるRIAで測定した結果, LHは8例で対照とした正常婦人9例の卵胞期に比べて持続的に高値を示す特徴がみられた.なおFSHは正常卵胞期と大差はみられず, LHとFSHの解離が特徴づけられた.つぎに予め下垂体の機能を窺う目的でLH-RH100μgの静注を行つたところ, LHは全例15ないし30分でピークに達しその増加率は前値の平均6.3倍で正常卵胞中期の2.8倍に比べ良好なほゞ排卵前期に相当する反応がみられた.一方FSHは正常卵胞期に比べやゝ低い反応を示すにとゞまつた.高LH値を示す多嚢胞卵巣の estrogen 投与に対する gonadotropin の反応をみる目的でpremarin20mgの静注を行つた.その結果を多嚢胞卵巣ではLHの基礎値が高いことを考慮して変動値を投与前値を100とした指数で表わし正常群と比較した.両群とも投与後一旦 suppress され, 正常群では32時間後に前値のレベルに達し48時間後に投与前値の平均334±36%のピークを形成し以後漸減するが, 多嚢胞卵巣では suppress 後前値まで回復する時間がやゝ遅れる傾向がみられ, そのピーク値ももつとも大きいもので前値の200%で正常卵胞中期と比較して有意に低いことが分つた.多嚢胞卵巣にみられるLHの周期性を失つたオス型の分泌パターンと, Lopetz et al.(1969)の多嚢胞卵巣の estrogen feedback 機構の障害を示唆する報告などから, premarin の投与試験に対する反応の態度に興味がもたれたが, 予想に反して estrogen の positive feedback 機能はかなり保たれていることが分つた.しかしpremarin投与後の反跳増量のピーク値を前値と比較すると平均1.4倍で, 正常卵胞中期の3.3倍に比べ明らかに低い事実から, 多嚢胞卵巣の病態の本質は中枢にあり, 視床下部における estrogen の feedback 作用に対する反応性の低下が一因をなしているものと考えられる.

著者

三宅 侃 大阪大学医学部 産科学婦人科学
倉智 敬一 大阪大学医学部産科婦人科学教室
倉智 敬一 大阪大学医学部産婦人科学教室
塩路 武徳 大阪大学医学部産科婦人科学教室
宮崎 正博 大阪大学医学部産科婦人科学教室
青野 博博 大阪大学医学部産科婦人科学教室
衣笠 隆之 大阪大学医学部産科婦人科学教室
辛川 武久 大阪大学医学部産科婦人科学教室
宮崎 正敏 大阪大学医学部産科婦人科学教室
衣笠 隆之 東大阪市文中央病院
倉智 敬一 大阪大医

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