食環境の市場変化と消費者行動の関わり : 中食の流通と消費
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概要
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今日の食環境の中できわめてウエイトが高い「中食」の消費と流通の実態および今後の動向について,消費者と中食販売業者を対象に調査し,食教育の指標並びに適正な食市場の形成等を考察した。1) 9割以上の消費者が中食を利用し,世代別では若年層が最も多く,就業形態では主婦の常勤者,家族数では1人世帯の利用度が高かった。中食の利用動機は「仕事や家事で忙しい時」「外出した時」が多いが,「疲れたとき」が若年層に多かった。購入頻度の高いメニューは,弁当・サンドイッチ,揚げ物で,そう菜よりも主食の購入頻度が高い。中食を利用するものでは副食のみにとどまらず主食を含め,食事における中食の比重が高くなっていることが示唆された。2) 事業者における最近3〜5年間の中食,生鮮食料品,冷凍,加工食品の販売量の動向を比較すると,中食は6割の店舗で増加し,特に生活協同組合,量販店で7〜8割増加していた。反面,そう菜専門店での減少が目立った。3) 中食の購入理由は,消費者および事業者の両者に「便利」「調理時間の短縮」等便宜性が最も多く,「おいしい」は消費者が「経済的」は事業者が高く評価していた。4) 事業者における消費者サービスは,「郷土食・行事食の提供」「薄味にする」「有機食品の使用」「栄養成分の表示」「レシピの配布」「地場産食品の使用」など,中食利用の拡大に伴って多様な取り組みがみられた。このうち,「郷土食・行事食の提供」はそう菜専門店で,「薄味にする」は量販店や総合食料品店での取り組みが多かった。5) 今後の利用については7割以上が「今までと変わらない」としており,高齢者ほど多い。利用度の高かった学生に減らしたいというものが最も多く約3割みられた。社会的な背景からみれば,女性の社会進出,高齢化の進展によって,今後,中食の利用を必要不可欠とする消費者の増加が推察できる。6) 消費者が中食に期待することは,食品添加物の少ない商品の使用や栄養成分の表示など,健康・安全志向や的確な食情報による販売対応である。また,中食容器の材質表示や廃棄に伴う資源の消費と環境保全対策を求めている。7) 事業者は中食の消費者対応として食品添加物の少ない食品の使用や食品の産地表示,有機食品の使用,さらに高齢者用,病人用食品の開発等,多様な付加価値を掲げた。以上,急速な需要の伸びを示す中食に対する消費と流通両者の課題として(1)健康・安全性の確保,(2)食に係わる情報提供,(3)地域の食文化の伝承と創造,(4)食材と容器の資源,環境保全等について提言したい。さらに,中食の適正な消費者選択ができるよう表示上の法的規制についての要望,あわせて食教育への対応が必要となる。
- 2001-05-20
著者
-
藤井 昭子
神戸女子大学
-
新澤 祥恵
北陸学院短期大学
-
坂本 薫
賢明女子学院短期大学
-
峯木 真知子
青葉学園短期大学
-
石井 よう子
藤女子大学
-
川井 考子
和歌山信愛女子短期大学
-
金谷 昭子
神戸女子大学
-
坂本 薫
兵庫県立大学環境人間学部
-
峯木 真知子
東京医療保健大学医療保健学部医療栄養学科
-
石井 よう子
元藤女子大学
-
新沢 祥恵
北陸学院短大
-
峯木 真知子
青葉学園短大
-
坂本 薫
賢明女子学院短大
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