正月の食生活におけるおせち料理の喫食状況の変化
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
伝統的年中行事のなかで,位置づけの大きい正月の食生活の動向を探るため,石川県を中心とした地域に居住する女子短大生の正月3が日の食生活より,雑煮と和風おせち料理の喫食について約20年間の変化を検討した。1) 雑煮では,正月3が日をとおしての喫食率は若干減少傾向にあるものの,ほとんどのものが食べていた。しかし,日別にみると,調査当初の1978年では,大部分が元日に食べているが,1984年以降は元日に必ず食べるといった傾向は少なくなり,また3が日間の平均喫食回数も徐々に減少していた。2) 従来よりも一般的におせち料理としてよく取り上げられるものや,当地の正月に準備されるもののなかで,出現頻度の高いもの18品目を検討した。回答者のほとんどがこれらのうち,なんらかの料理を喫食していたが,個々にみるとほとんどの料理の喫食率が減少しており,料理の種類が少なくなっていることが推察された。また,日別に分析すると,元日は食べても2日,3日と減少しており,特に当初よりも最近の調査においてその傾向が顕著になっていた。3) 回答者の居住地域(金沢地区,加賀地区,能登地区,石川県外)による喫食状況を比較したところ,有意差のある料理は少なかった。特に調査当初は有意差の認められる料理もあったが,1991年以降は全くなくなり,伝統的な行事食も画一化されていることが推察された。また,回答者の家庭の家族形態による喫食状況の比較では,高齢の家族との同居が予想される拡大家族世帯での喫食率が高いことを期待したが,有意差のある料理は少なく,あっても,核家族世帯のものの喫食率の高いものが多かった。4) 正月3が日に喫食した料理を,和風,洋風,中華風等に分類して検討したところ,喫食料理は減少しており,特に和風料理の減少が著しかった。これに関連し,主食類の動向を分析したところ,軽食類の増加が大きかった。また,洋風・中華風料理は若干増加しているが,特に種類が多様化する傾向がみられた。5) 以上の調査結果より,正月行事は大きな節目として依然として生活の中に根づいており,その中で雑煮や従来より継承されたおせち料理を食べる習慣も続けられていくものと考えられる。しかし,従来のように正月中続けて食べることはなく,元日のみ儀礼的に食べるといったかたちとなり,おせち料理の形式も徐々にではあるが変容していくことが推察された。
- 2001-02-20
著者
関連論文
- 食環境の市場変化と消費者行動の関わり : 中食の流通と消費
- 現代の食生活における郷土食 : 石川県における郷土料理の調理状況
- 正月の食生活における雑煮の変化
- 正月の食生活におけるおせち料理の喫食状況の変化
- 食環境における食市場の変化と消費者行動 : 有機農産物の流通と消費
- 中食の流通と消費 : 事業者調査より : 第1回 近畿支部, 東海・北陸支部合同研究発表会
- 食品質量ならびに容器中液量の目測の実態とその検討
- 現代の食物の嗜好傾向についての一考察
- 女子短大生の食物の嗜好について
- 餡かすを利用した菌床栽培なめこの官能評価
- 災害時のメニュー開発 : 東海・北陸支部報告(クッキングルーム)
- 食品残渣からの有機肥料栽培による野菜等の食味評価
- 17. 食品残渣による有機肥料栽培の野菜等の食味評価(東海・北陸支部)
- 新品種シイタケ『LE33』の嗜好評価
- 現代の食生活における郷土食 : 加賀野菜の使用実態
- 現代の食生活における郷土食 : 加賀野菜の消費動向
- 現代の食生活における郷土食 : 能登地区における魚介類の調理文化
- C-11 現代の食生活における郷土食 : 行事食としてのすし,えびすの調理(第2回 東海・北陸支部,近畿支部合同研究発表会)(支部だより)
- C-10 現代の食生活における郷土食 : 加工食品の喫食実態(第2回 東海・北陸支部,近畿支部合同研究発表会)(支部だより)
- 中部地方におけるいも類利用の地域性
- 家庭の調理状況、食事状況とそれに関わる諸要因
- 食物の嗜好に関する研究(第2報) : 経時変動による嗜好動向の検討
- 家庭用調理器具の所有と使用に関わる要因
- 正月の食生活の動向に関する一考察
- 食物の嗜好に関する研究(第1報) : 現代の嗜好傾向における年齢差と性差の検討
- 肥満児の食生活に関する研究 : 肥満傾向を解消する上での問題についての一考察