都市近郊採卵鶏経営におけるマーケティング活動 : 都市近郊と遠隔地の農家販売卵価の比較から
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概要
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日本の養鶏産業は過剰生産などのため,厳しい局面におかれている。正常卵1kg当たりの生産費は規模拡大と飼料費の低下により,1981年の275円から1991年180円へと傾向的に低下をみせている。しかし,生産費の低下以上に激しい変動を繰り返しながら卵値が変動している。このため,長期的に低下傾向をもつ卵値水準に耐えられる供給構造を実現する必要がある。都市近郊では遠隔地と比べ,高地価,高賃金,公害問題などのため,養鶏経営は高生産費条件におかれており,存在・成立するのに相対的不利である。このような状況のもとにある都市近郊養鶏経営は,色々なマーケティング活動を通して存立,存続しているが,市場立地の有利性の相違がもたらす生産費格差の問題は既に分析されている。そこでここでは近郊と遠隔地の販売価格差に着眼し,その格差をつけてきた商品の差別化流通・販売の問題,さらに購買部門を差別化して高価格販売及び低価格購入をしている購買部門でのマーケティング問題を具体的に検討した。そこで,色々なマーケティング活動を行っている都市近郊の優良事例を類型化して遠隔地と比較検討した結果は次のようになる。1)I養鶏(マーケティングIとしてサービス及び物的マーケティング活動を遂行している経営):生協と年間無変更値格のもとで薬無使用・無法卵直販,宅配販売,自家販売,消費者教育などを実施している。卵値決定方式は生産費保障決定方式で,当時全国平均農家販売価格が1kg当たり110円であったのに対し,260円の高価格で販売している。2)K養鶏(マーケティングIIとして製品の差別化を遂行している経営):鉄分強化卵を開発して平均販売卵値が遠隔地に比べ, 1kg当たり54〜80円高い。その結果,所得では82.5〜85円高い。3)Y養鶏(購入部門のマーケティング活動を遂行している経営):購入飼料の共同購入,飼料工場から直送という形で経営を営んでいる。Y養鶏の純収益は遠隔地より37.9円高い。その差額は19.5円の購入部門の差額と18.4円の販売卵値の差額で構成されている。以上の3機能は都市近郊養鶏の存立条件として今後大切となるだろう。
- 1994-12-28
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