WTO体制下豪州産牛肉産業の販売戦略 : 米国産牛肉との比較

概要

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米国が環太平洋地域内の貿易関係を犠牲にして,北米貿易圏の発展を目指すようになったことにより,輸入割当市場における豪州産牛肉の輸出に減少が生じ,そのため豪州の流通・販売戦略の舞台は,米国からアジア市場へと移行した。米国に比べ生産費が高く競争力の劣る豪州産穀物肥育牛肉の輸出割合は低下し,高品質のチルド牧草肥育牛肉のマーケットシェアが,増大する傾向にある。また,そのシェアの拡大を図る販売戦略の一環として,牛肉製品並びにその銘柄を多様化させ,消費者のブランド志向への定着を目指そうとする動きがみられる。市場解放後の日本市場では,輸入牛肉および国産のサーロインとバラ肉価格は,一般的に下がる傾向にある。また,今日の米国の牛肉マーケティング戦略の特徴として,従来の政府主導型から多国籍企業主導型に変化していることが挙げられる。これら食肉産業におけるグローバリゼーションの成長は,国家間の政治上の関係より,むしろ個々の会社関係の方にウェートを置いた形に変貌しつつある。つまり多国籍企業の存在そのものが,世界市場の動向に直接影響を及ぼすという現象が,顕著に現れてきているといえる。
1997-12-26