亜熱帯沖縄における天然林の資源植物学的研究 (V) : 石垣島於茂登岳山麓のサキシマスオウノキについて
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概要
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この研究は, 亜熱帯沖縄における森林植物の希少植物等の探索・収集・保存・増殖に関する研究の一環として, 石垣島於茂登岳山麓において自生が確認されたサキシマスオウノキ(Heitiera littoralis)林を対象に生育木の現状および生育地の植生を明らかにしたものである。調査の結果は次のとおりである。1. サキシマスオウノキは通常マングローブの後背湿地や海岸付近に分布する。しかし, 石垣島於茂登岳山麓の宮良川上流底原の沢沿い(標高50∿80m)にもサキシマスオウノキが分布することが明らかになった。2. 於茂登岳山麓のサキシマスオウノキは, 沢沿いでほとんどが礫の堆積地に分布していた。3. 現在, サキシマスオウノキは流域全体で174本の生育が確認され, そのうち5本は折損木であった。また, 10個の切り株が確認された。4. この流域で樹齢が最も古いものと推定されるサキシマスオウノキが3本確認された。しかし, 一本は健全に生育しているが, 他の2本は地上高1.70mで伐倒され, そのうち1本は枯死し, 残りの1本は萌芽していた。5. 本群落はサキシマスオウノキを優占種とし, 湿地∿湿潤地性の種と多くの山地性の種を構成種とする特異な植生であることが明らかになった。特異な立地に成立する要因についていくつかの考察を行ったが, これについては今後の課題である。6. 於茂登岳山麓のサキシマスオウノキは西表島の古見の群落に比べて, 標高の高い特異な立地に群落を形成することから, これらがどのように定着し, 林分を形成したのか非常に興味深く, これらの更新動態についてさらに研究を進めていきたい。7. 石垣島於茂登岳山麓のサキシマスオウノキは, 特異な例として内陸部に分布することから石垣市の天然記念物に指定すべきであろう。さらに将来は, 沖縄県あるいは西表島のサキシマスオウノキと同様に国指定の天然記念物に指定すべきであろう。
- 琉球大学の論文
- 2000-12-01
著者
-
新里 孝和
琉球大学農学部付属演習林
-
新本 光孝
琉球大学熱帯生物圏研究センター
-
仲里 長浩
東海大学沖縄地域研究センター九州東海大学総合農学研究所
-
仲里 長浩
東海大学沖縄地域研究センター
-
石垣 長健
琉球大学熱帯生物圏研究センター
-
新里 孝和
琉球大・農・附属演習林
-
石垣 長健
琉球大学熱帯生物圏研究センター西表実験所
-
新里 孝和
琉球大学農学部
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