天然記念物西表島船浦のニッパヤシの遺伝的多様性
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概要
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南西諸島西表島の船浦にあるニッパヤシ集団は1959年に天然記念物に指定されて以来,縮小の一途をたどっている。この集団の全ての個体(28個体)の遺伝的多様性をRAPDで解析した結果,27個体は全く同じRAPDバンドをもち,小型の1個体だけが僅かな多型を示した。従って,この27個体は遺伝的に同一なクローンである可能性がある。これは集団内で開花しても種子が全く形成されない事実にも関連していると思われる。ニッパヤシは根茎が水平方向に伸長して2分岐し,その各々の先端にシュートを形成しながら栄養繁殖をする性質があり,船浦においてもこの栄養繁殖によってのみ集団が維持されていると考えられる。集団サイズの急激な縮小,集団が栄養繁殖によるクローンであること,結実しないことなどを考えると,船浦のニッパヤシは絶滅の途をたどっていると言える。
- 日本植物分類学会の論文
- 2000-02-28
著者
-
瀬戸口 浩彰
京都大学大学院人間・環境学研究科
-
高相 徳志郎
総合地球環境学研究所
-
仲里 長浩
東海大学沖縄地域研究センター九州東海大学総合農学研究所
-
仲里 長浩
東海大学沖縄地域研究センター
-
瀬戸口 浩彰
京都大学総合人間学部自然環境学科
-
渡邊 かよ
京都大学総合人間学部自然環境学科
-
高相 徳志郎
琉球大学熱帯生物圏研究センター西表実験所
-
戸部 博
京都大学大学院理学研究科植物学教室
-
高相 徳志郎
琉球大学熱帯生物圏研究センターマングローブ生物学分野
-
戸部 博
京都大学大学院理学研究科
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