同齢単純林の形質構成に関する研究(農学部附属熱帯農業研究施設)
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概要
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1)構造材生産林木材の形態的利用をめどとする構造材は, その材料的性質としては, 径級の大きいこと, 通直, 完満であること, 節その他の欠点がないこと, 年輸幅が均等であること, 成熟材の部分が多いこと, 心材部分が多いことなどが要求される。このような構造材を生産する施業技術としてはつぎのような諸点があげられる。構造材の対象となる樹種品種は, 適切な保育作業を実施することにより, 無節, 通直, 完満な樹幹が育成できること, 諸被害に対する抵抗性が大であることなどの特性を有するものが望ましい。植栽本数は, 樹種の特性を第1に考慮し, これに気象, 地形, 土壌の肥よく度などの自然的条件, 交通の便否, 労賃などの経済的条件を考慮して, 経営目標にしたがって決定しなければならない。幼齢時における下刈, つる切(除伐), は森林の造成上欠くことのできない保育作業であり, 壮齢時における(除伐), 間伐, 枝打などの保育作業は, 形質不良木, 生長不良木の除去, 単木の生長促進, 無節, 通直, 完満材の育成をはかるために実行しなければならない。構造材生産林業を営むための経済的条件としては, 地利がよくて労働力が得られやすく, 育林資本を投入できることが必要である。2)現実林の形質構成良質構造材を生産するための基礎的研究の段階として, まず立木の品等区分方法について研究し, さらに九州の中部以北に生育するスギ, ヒノキ現実施業林を対象に林分材積収穫表を調製し, これにもとづいて品等別林分収穫表の調製をこころみた。(1)立木の品等区分外部観測によって立木の品等を区分する一つのこころみとして, 樹高と幹材積の関係を調べ, さらに立木から採材した場合の素材価格について比較検討を行ない, 新しい立木品等区分方式を提案した。すなわち樹高の1/2以下の幹材積が立木材積の約30%を占めること, 採材長級の1/2以下の価格が単木価格の約90%を占めることから, 樹高の半分以下の樹幹に出現する欠点の状態によって品等を区分した。この方法は, 構造材としての実質的な利用上から考えると, 立木品等判別基準として優れたものと認められるので, 以下の研究にはこの方式を用いた。(2)林分材積収穫表調製した九州の中部以北にある三地方のスギ林およびヒノキ林の林分材積収穫表を相互比較すると, 森林の生育状況はいずれの地方も著しい差異はなく, 相対的には各地方とも恵まれた生育環境下にあり, 比較的良好な生長を示しているといえよう。(3)品等別林分収穫表上記の各林分材積収穫表ならびに立木品等区分方式にもとづいて, 品等別林分収穫表の調製をこころみた。すなわち, 品等別の本数および林分材積の占有率を5年ごとの齢階平均値で求め, これに主副林木合計の単位面積当りの本数および林分材積を乗じて品等別林分収穫表を調製した。これによると, スギ林, ヒノキ林における1等木は本数, 材積ともに年齢の経過にともなって漸次多くなる。2等木の本数は年齢の経過にともなって減少し, 材積は漸次多くなり, 3等木は背振村有林のスギの材積を除けば, 本数, 材積ともに減少する。4等木は本数, 材積ともに年齢の経過につれて減少する。現在九州の中部以北で多く採用されている伐期, スギ40年, ヒノキ45年について優良形質木の蓄積量をみると, スギでは本数210∿230本, 材積97∿98m^3,ヒノキでは104∿306本, 材積92∿95m^3であって, 全蓄積量に対する比率はスギで本数率約16%, 材積率約23%, ヒノキで本数率約15%, 材積率約18%となり, 優良形質木の占める比率はきわめて少ない。このことは壮齢時における保育的施業が十分に実施されていないことに主因があると考えられる。この点を明らかにするために, 構造材生産で著名な吉野地方のスギ林と九州北部地方におけるスギ林の立木品等構成について調査検討した。両者を比較すると, 吉野地方はすでに35年生の林分でそのほとんどが優良形質木で占められているのに対し, 九州の中部以北の地方では逆にその大半は不良形質木で占められている。このように, 吉野地方において優良形質木の蓄積量の大きいことは, 品種, 立地条件などの要因に違いはあるにしても, 主として幼, 壮齢時における集約な保育的施業の行なわれたことに主因があると考えられる。3)森林の保育と形質構成以上にみてきたように, 林木の形質は保育による影響が大きいと考えられる。そこで植付けしてから伐期にいたるまでの一連の保育作業の実行の差異と林木の形質構成について調査研究を行なった。(1)幼齢林の保育と形質構成幼齢時における下刈, つる切が林分の形質構成におよぼす影響を明らかにするため, 保育林と保育手遅れ林にわけて検討した。i)量的構成単位面積当りの成立本数および林分材積, 胸高直径, 樹高, 単木材積などについて検討した。
- 1973-12-01
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