キュウリジュース培地遠沈残渣中に存在する Phytophthora capsici 遊走子嚢の遊走子分割必須物質の追跡(農学部門)

概要

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キュウリジュース培地は, Phytophthora capsiciにおいて, 間接発芽能力の高い遊走子嚢を多量に形成させるための好適な培地であるが, この遠沈上清液を用いると, 遊走子嚢は多量に形成されるが, 間接発芽が全く起こらない。これは, 形成された遊走子嚢が遊走子への分割能力を欠くためである。分析の結果, 遊沈残渣中に存在するステロールが遊走子分割に必須の物質であることがわかった。ガスクロマトグラフィーによると, キュウリ果実中に含まれるステロールは, β-シトステロールであった。β-シトステロールと共に, 植物体中に広く存在するスチグマステロールも, 同様に高い遊走子分割活性を示した。これに対し, 動物ステロールのコレステロールはこの活性が低く, 菌類ステロールのエルゴステロールや, ステロール前駆体スクワレンや, 誘導体カルシフェロール(ビタミンD_2)には, ほとんど活性が認められなかった。菌体内に取込まれたβ-シトステロールは, エステル化されるが, それ以外の代謝は受けずに, 遊走子嚢の細胞膜形成に関与しているものと考えられる。
京都府立大学の論文
1980-11-29