水耕ミツバの Pythium 根ぐされ病 : II. 病原菌の微細構造(農学部門)
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概要
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ミツバ根ぐされ病菌Pythium sp. (CCR-76)は, 糸状遊走子嚢を形成するタイプに属し, 遊走子形成に際しては, まず, やや細い菌糸状の逸出管を伸ばし, その先端から, 球嚢と呼ばれるプラズモディウムが放出され, その後, 個々の遊走子への分割が起こる。この過程の進行には, Phytophthoraと同様にステロールが重要な役割をはたしている。このステロールを培地に添加する際, 従来, アセトンを溶媒として用いていたが, 非イオン系界面活性剤Tween 80を用いることを検討した。Tween 80は菌体生育に供試の範囲内では全く影響がないので, この方法により, 培養中に任意にステロールの添加が可能となった。本菌の場合, 0.1mg/mlのβ-シトステロールの1時間の取込みで, すでにかなりの遊走子形成能が獲得される。本菌では普通の菌糸と遊走子嚢の区別がつきにくいが, 微細構造から判断して, 液胞(内部は薄い均一な海綿状構造がみられる。次第に融合して大型に発達する)を多く含むものが普通の菌糸であり, 小胞(おそらく, ライソゾームやファゴゾームならびに遊走子の細胞膜形成に関与するもの)を多数含むものが遊走子嚢と思われ, この様相は, Phytophthoraのそれに酷似している。水浸3∿4時間後には, プラズモディウムが観察され, 核は顕著となり, 鞭毛の形成が認められる。その後, 核を中心として, 1個の遊走子に相当する細胞質の周囲に小胞が配列して, 次第に融合しながら個々の遊走子に分れてゆくものと思われる。ステロール欠の菌体ではこれらの過程はみられない。またこの頃, 細胞壁内面に長いひも状の小胞により充満された胞嚢が残されたままの空の菌糸(逸出管と思われる)がよく認められる。このひも状小胞は二重膜で構造され, マカロニ状である。この小胞を含んだ胞嚢(小胞嚢と呼んでいる)の機能は不明であるが, ステロール含有菌体に顕著であり, プラズモディウムの放出に関与している可能性が推測される。
- 京都府立大学の論文
- 1977-11-30
著者
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