水耕ミツバの Pythium 根ぐされ病 : I. 病徴ならびに病原菌(農学部門)
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概要
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1976年6月, 京都市南区上鳥羽の水耕栽培ミツバに激しい根ぐされ症状が発生した。ほとんどの根は褐変・腐敗しており, その組織内に迷走する隔膜のない菌糸が認められた。分離操作により高頻度でPythium sp.が検出され, その菌はミツバの根に高い病原性を示し, 自然発生と同様の病徴を再現した。本菌の生育適温は28∿32℃にあり, 36℃でもかなりの生育がみられる。本菌は菌糸と遊走子嚢が区別のつかない型に属し, 好適環境下で, 逸出管を伸ばし, 3∿4時間後, 球嚢が形成され, さらに20∿30分後, 遊走子に分割して水中に泳出する。この遊走子形成の最適温度は24℃で, 32℃以上では起こらない。28℃のミツバジュース(20ml)培養において, 菌体量は3日目でほぼピークに達し, 漸増したのち, 10日目頃から逆に減少しはじめる。遊走子形成能も同様に3日目頃が最高で, 以降漸減し, 2週間ほどで不能となる。この頃の菌糸はほとんど自己融解をはじめているが, 部分的に, 原形質密度の高い菌糸断片が残り, 40日(20℃)以上菌糸伸長能を保持していた。また, 接種した滅菌ミツバ根の組織上に卵胞子の形成がみられた。蔵卵器(大きさ平均42.8μm)は球形で, 周囲に1∿3個の蔵精器が付着しており, 卵胞子(大きさ平均34.9μm)が蔵卵器内に遊離して形成されていた。菌種同定を大阪府立大学農学部植物病学研究室に依頼中である。24時間浸漬消毒の場合, ホルマリン14.5ppm(25600倍液), 次亜塩素酸カルシウム62.5ppm(16000倍液), 殺菌剤処理では, パンソイル, ダコニールは10∿20ppm, タチガレンは40∿50ppmがそれぞれ有効限界濃度となった。
- 京都府立大学の論文
- 1977-11-30
著者
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