Phytophthora capsici の遊走子の運動に関する研究 V : 各種緩衝液中における遊泳異常と前・後鞭毛の働き(農学部門)
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概要
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各種緩衝液中において, Phytophthora capsici Leon.の遊子が示す異常遊泳を, 暗視野照明下において観察し, 遊泳における前・後鞭毛の働きを推定した。Sorensen緩衝液〔緩衝液(B)/遊走子けんだく液(Φ)=3/1〕の場合, pH 5.5において, 遊走子は蛇行型遊泳をなし, 次第にその程度が激しくなり, 終には円運動を起こした。pH 8.0においては, 遊走子は正常と同じ捻転直進をなし, 最後には不整円運動を行なうようになった。これらは, pH 5.5において後鞭毛に対する阻害がより強く, pH 8.0においては前鞭毛への阻害がより先に起こったためであろう。Michaelis緩衝液(B/Φ=2/2)の場合, 慨して, 遊泳阻害はSorensenより強く起こった。pH 5.5において, 遊走子は静止後も前鞭毛の振動を永く残し, 比較的大きな振巾をもつ波動運動が容易に観察された。また, pH 5.5,6.5において, 前鞭毛遊走子を, pH 8.0においては, 後鞭毛遊走子を多数認めることができた。前者は捻転力を失って円運動を, 後者は不完全捻転にもとづく不整円運動を行なった。McIlvaine緩衝液の場合, B/Φ=1/3において遊泳は最も活発で, いずれのpH値においても捻転直進を認めた。遊泳速度は脱イオン水中に比べてかなり遅いが, 捻転回数はむしろ増加した。以上の観察より推定される遊走子の遊泳方法は次のようである。遊走子は体の後端に2本の鞭毛を有し, 1本はそのまま後方へ, 他の1本は体側に沿って前方へ伸びる。後鞭毛は全体が比較的小さな振巾で波動するのに対し, 前鞭毛は体側に接しない先端の部分でのみ波動し, その振巾はかなり大きい。これらの波動は平面的であるが, 両者において, 波動面は必ずしも一致しない。この波動が遊走子の推進作用をもつものらしい。形態的に, 鞭毛は体の一側にあるにもかかわらず, 遊走子が直進し得るのは, 遊走子が捻転することによる。この捻転は主として後鞭毛の働きであり, 前鞭毛は体のバランスを保つことにより捻転を円滑にする補助的役割を有するものと推察される。
- 京都府立大学の論文
- 1967-10-15
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