ジャガイモ疫病菌の遊走子嚢とその発芽における核現象(農学部門)
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概要
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Phytophthora infestans f. sp. infestans Waterhouse菌の遊走子嚢の発芽には, 間接および直接の2つの発芽型があり, 遊走子嚢を水に入れると, 間接発芽は11℃が最適で5時間後に68.8%の発芽率を示すのに対して, 直接発芽は20℃が最適で5時間後に7.7%の発芽率を示した。この2型の発芽現象を明らかにするために, 筆者は塩酸ギムザ法による核染色を行ない, 核現象の立場から遊走子嚢およびその2型の発芽過程を追究した。遊走子嚢の核には2つの型があり, 1つは大型で数の少ないものと, 他は小型で数のやや多いものである。核の大きさを測定した結果, 大型核は3.8∿5.0×2.8∿4.0μ, 小型核は2.4∿3.0×1.5∿2.5μであり, 遊走子嚢1個の中の大型核数は2∿12個, 小型核数は7∿15個で, 両発芽型の間に明らかな差異があった。それぞれの核型を有する遊走子嚢群は, その長さと核数とは正の相関が認められた。1個の遊走子嚢から放出される遊走子の数は2∿12個, 平均6.28±1.80個であったが, 染色によって得られた大型で数の少ない遊走子嚢群の核数は2∿12個, 平均6.02±1.10個であったし, 両者は全く一致しているから, 間接発芽をすべき運命を有する遊走子嚢の核は, 大型で数の少ないものに該当するといえるであろう。核が大型で数の少ない群の遊走子嚢の頻度は, 平均97.1%であるのに対して, 核が小型で数のやや多い群の遊走子嚢の頻度は, 平均2.9%であった。この両平均値の間の比率は, 遊走子嚢形成6時間後と30時間後において同じであったから, 遊走子嚢発芽の2型はその形成初期において, 本質的に決っていると考えられる。したがって本病菌遊走子嚢の発芽の2型の比率は, ほぼ97 : 3ぐらいと見られるが, この比率は本病菌の種の1特性になるように思われる。
- 京都府立大学の論文
- 1972-10-15
著者
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