チューリップの白色疫病に関する研究 I : 疾病とその病原菌について(農学部門)
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概要
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1951年以来, 戦後初めてオランダから輸入されたチューリップの球根に, 貯蔵中の腐敗が目立って多くなり, 栽培者の間で問題になった。従来の研究者達はその原因を研究してFusarium菌によるとしたが, しかし筆者は種々の点で疑問を生じた。本病菌は, 球根ばかりでなく, 葉, 茎, 花, 根などチューリップの各部位を侵す1種のPhytophthora菌で, 水浸状暗色の病状を呈し, 葉では葉先あるいは葉縁に乾くと灰白色の病斑を生じ, ヨーロッパ北部のリーキに生ずるいわゆる"white tip"に類似している。貯蔵球根は, 夏の高温期には腐敗を生じないが, 秋の冷涼期に入ると腐敗がはじまる。圃場では定植の直後から4月ごろまでの低温期に発生する病害で, とくに3∿4月のころが最も甚だしい。その被害はまことに甚大で, 今後のチューリップ栽培上憂慮すべきものがある。本病菌は, 発育の温度範囲が0°付近から28℃より少し低い付近で, 発育適温は20℃ないし15℃付近であり, わが国ではまれな好近温性の病菌である。種々の培地上で卵胞子を豊富に形成するが, 遊走子嚢の形成は病患部と培地ともに良好でない。しかし液体培地中に発育せしめた菌糸を水中に浸漬すると, 遊走子嚢を形成する。本病菌は, 筆者がすでに報告したラッキョウ白色疫病を原因するPhytophthora porri Foisterとまったく同種であり, チューリップの新病害として, 病害の和名を白色疫病と命名したい。なお始めて本病菌の厚膜胞子を記載した。
- 京都府立大学の論文
- 1970-10-15
著者
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