有用植物の疫病に関する研究 : (V) 茄果綿疫病菌に関する知見
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1. 京都附近に於て茄子の果実を侵害する3種のPhytophthora属菌の中の1種に就て, 形態学的生理学的実験を行ひ, 且つ接種試験による病原性に関する調査を行つた。2. 本病菌は菌糸の他に游走子嚢, 厚膜胞子, 有***官の卵胞子などを形成するが, それらの大さに就て測定した結果は茄果綿疫病の病原菌Phytophthora Melongenae SAWADAとよく一致し, Phytophthora parasitica DAST.の記載に比べて特に異る点を認め得ない。3. 本病菌は9℃附近から36℃より少し高い附近までの間に於て発育し, 発育最適温度は28°∿30℃附近である。コーンミール寒天培地上35℃にて7日間に菌叢が径62mm発育するからTUCKER氏によるとPhytophthora palmivora BUTL.ではない。4. 本病菌々糸は48℃の湯中で5分間或は46℃の湯中で10分間で死滅し又+3°∿-3℃附近に7日間菌叢を保つと死滅するやうである。5. 各種の培地上でよく発育するが游走子嚢及び厚膜胞子の形成は16°∿32℃の間でみられ, 26°∿28℃附近が形成の最適温度のやうである。尚有***官の形成は26°∿28℃にてオートミール寒天培地で2ケ月位, 馬鈴薯煎汁寒天培地では3ケ月以上を要した。6. Malachite greenの各種濃度に対する本病菌の発育に就て実験したる結果(LEONIAN氏の方法に依る), 200万分の1濃度より稀薄なものに於て発育する。故にMalachite greenの200万分の1と160万分の1との間の濃度に於て発育の限界があるものと思はれる。7. 本病菌を各種植物に接種しその病原性に就て実験してみた。茄子果実に対しては有傷及び無傷の場合何れも病原性が著しいのに対して, 蕃茄, 蕃椒, 西瓜, 無花果, 苹果, 夏橙では有傷の場合のみ病原性を示し, 無傷の場合は何れも病原性を示さなかつた。又葱, 胡瓜, 菜豆莢に対しては有傷及び無傷の何れの場合も全然病原性を示さなかつた。8. 以上の結果からして本病菌はTUCKER氏の分類に従へばPhytophthora parasitica DAST.に最もよく近似するから, Phytophthora Melongenae SAWADAは凡らくその異名と見做してよいのではないかと思はれる。然し乍ら接種試験に於ける病原性の点などに2,3の疑問を残す。
- 京都府立大学の論文
- 1953-09-01
著者
関連論文
- 疫病菌遊走子のうの多量形成培養法(農学部門)
- Phytophthora capsici LEONIAN 菌の游走子嚢の発芽菌糸の発育及び游走子嚢並に卵胞子の形成に及ぼす Malachite green の影響
- 稻黄化萎縮病に関する研究(第 2 報) : 苗代の第一次伝染源としての禾本科雜草
- 有用植物の疫病に関する研究(第 7 報) : Phytophthora capsici LEONIAN 菌に因る西瓜褐色腐敗病に就て
- 有用植物の疫病に関する研究 : (V) 茄果綿疫病菌に関する知見
- (229) 非イオン界面活性剤を用いたPhytophthoraおよびPythiumによる植物疾病の新しい防除への試み
- カンキツ褐色腐敗病ならびに緑かび病の病徴進展機作の比較(農学部門)
- Phytophthora capsici LEON. の遊走子のう形成機構研究のための抗生物質の利用(農学部門)
- Pseudomonas sp. による Phytophthora capsici LEON. の遊走子のう形成刺戟(農学部門)
- Phytophthora capsici LEON. の遊走子のう形成に対する riboflavin の促進効果と光によるその抑制(農学部門)
- 栄養欠乏状態における Phytophthora capsici LEON. の菌糸生長と遊走子のうの形成(予報)(農学部門)
- (23) 有用植物の疫病に關する研究(第7報) : 西瓜褐色腐敗病とその病原菌に就て (昭和28年秋季關西部會)
- (22) 有用植物の疫病に關する研究(第6報) : 胡瓜疫病を起因する病原菌に就て (昭和28年秋季關西部會)
- Phytophthora capsici の遊走子とその鞭毛(農学部門)
- (36) Phytophthora capsici の遊走子のべん毛と被のう時における変化 (昭和43年度地域部会講演要旨(関西部会))
- キュウリジュース培地遠沈残渣中に存在する Phytophthora capsici 遊走子嚢の遊走子分割必須物質の追跡(農学部門)
- 非イオン界面活性剤を用いた Phytophthora および Pythium による植物疾病の新しい防除の観点(農学部門)
- キュウリジュース遠沈上清液で培養した Phytophthora capsici の異常遊走子嚢(農学部門)
- ジャガイモ疫病菌の遊走子嚢とその発芽における核現象(農学部門)
- Phytophthora porri FOISTER の厚膜胞子形成(農学部門)
- 多量の疫病菌遊走子のうを得るための紙蓋平面培養法(農学部門)
- チューリップの白色疫病に関する研究 I : 疾病とその病原菌について(農学部門)
- イチジクを侵す疫病菌 2 種の比較(農学部門)
- Phytophthora capsici LEON. の遊走子の運動に関する研究 VI : 遊走子の遊泳と小遊走子のう形成(農学部門)
- Phytophthora capsici の遊走子の運動に関する研究 V : 各種緩衝液中における遊泳異常と前・後鞭毛の働き(農学部門)
- Phytophthora capsici Leonian 菌の被のう胞子の発芽過程における核現象(農学部門)
- Phytophthora capsici LEONIAN 菌游走子の根部に対する趨化性と感染(農学部門)
- Phytophthora capsici LEONIAN 菌の発育並びに胞子形成に及ぼす窒素源の影響
- 無花果疫病菌游走子嚢の発芽並に菌絲の発育に及ぼす malachite green の影響
- Phytophthora capsici の遊走子の運動に関する研究 III : 走流性(農学部門)
- トマト青枯病の発生における病原細菌とネコブセンチュウとの混合感染(農学部門)
- アラカシ Quercus glauca THUNB. 葉の新病害「輪紋葉枯病」とその病原菌について
- 西瓜疫病とそれを起因する Phytophthora drechsleri TUCKER 菌について
- Phytophthora capsici LEONIAN 菌の游走子嚢発芽の二型における性現象(農学部門)
- Phytophthora capsici LEONIAN 菌の発育並びに胞子形成に及ぼす炭素源の影響
- Phytophthora capsici LEONIAN 菌游走子嚢の発芽生理に関する研究 (2) : 游走子嚢発芽の 2 型の発現に及ぼす蔗糖及び葡萄糖の影響と游走子嚢の原形質分離現象
- 稲黄化萎縮病に関する研究 : 第 1 報 疾病とその病原菌卵胞子に関する知見