塩化メチル水銀の毒性(1) : 運動協調障害と脳内水銀含量との相関性
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概要
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マウスに塩化メチル水銀(MMC)を単一および連続適用したときの中毒症状,特に運動協調障害と中毒発現の性差をMMCの適用量および脳内総水銀量との面から検討した.1)急性適用として50.6mg/kg(雌マウスのほぼLD50値)を雌雄マウスに単一経口適用し,一般症状および死亡の経日変化を13日間観察した.2)MMC50および100ppm混入飼料を両性のマウスに30日間暴露した.適用期間中,毎日rotarod perfbrmance testを行ない,一般中毒症状と運動協調障害の発現時期(onset)を比較した.また適用期間中,1〜2日間隔で脳内水銀量を測定した.単一適用時,雄では適用3日目から死亡がみられはじめ7日目までに7/8例が死亡した.一方,雌の死亡は雄より遅く,適用8日目からみられ,その後の死亡も5/8例で毒性に明らかな性差があった.しかし,MMC混入飼料で適用した場合には中毒症状の発現時期および中毒の程度ともに雌に強い感受性がみられた.本MMC連続適用量範囲内での発症の性差は発症までの水銀摂取量からみて雌は雄のほぼ半量を摂取した時点で発症することが判った.中毒症状とその発症過程は次の如くまとめられた.軽症:rotarod performanceの抑制(後肢のスリップ),中等症:rotarod performance中5分以内に落下,開脚,後肢の指を握りしめた状態の持続,ドルフィンキック様異常歩行,後肢の麻痺,体重減少,重症:rotarod performance 完全に不可能,前肢・後肢ともに麻痺,正向反射の抑制あるいは消失,衰弱,死亡.50および100ppm両群にみられたrotarod performance抑制の開始時点(onset)ならびに発症までの日数と1日のMMC摂取量とには相関性があり,発症までのMMC総摂取量は両群ほぼ等しかった.脳への水銀蓄積は両群共に直線的に上昇し,発症時点の含量はほぼ20μgHg/g brain(湿重量)とヒトの約2倍であった.雄に比べて雌はこの中毒発症の脳内水銀濃度閾値に達するのが早い傾向を認めた.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
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