アカエゾマツとエゾマツの天然雑種の形態的並びに生育上の特徴
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概要
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東京大学北海道演習林における1982年以来のアカエゾマツとエゾマツの節間雑種に関する調査研究の一環として,天然林における天然雑種の探索と諸形質の調査及び雑種植栽木の生長及び側枝形成状態などの観察調査を行った結果,以下の諸点が明らかになった。1.北海道内のアカエゾマツとエゾマツの混生する天然林で1986年から1988年にかけて14地域,25カ所において両種の天然雑種の探索,調査を行い,山部(2カ所),勇駒別,美瑛,置戸の5林分から計9個体の推定天然雑種を抽出することができた。2.そのうち4個体は,開花期,針葉の気孔列数などの各形質及び1年生枝の有毛性等で両種の中間的特徴を多く有するタイプ(g×jA)であった。一方,残り5個体はエゾマツとは1年生枝の有毛性と針葉上面の気孔列数によって容易に区分されるが,エゾマツ寄りの特徴の強いもの(g×jB)であった。3.これら両タイプのうち,g×jAは諸形質が人工林選抜の推定g×j(F1)によく一致した。また,g×jBはF1×jに対応するものと推定された。4.1982年に北海道演習林苗畑において抽出した雑種植栽木は,樹齢12,14年生時において,両種より生長が優れている。また,g×jは主条の当年伸長部分に側枝を形成する個体が少なく,その点エゾマツに近い形状である。A project, carried on in the Tokyo University Forest in Hokkaido since 1982, to search for natural hybrids between Saghalien spruce (Picea glehnii: g) and Yezo spruce (P. jezoensis: j) and to perform some few studies on them, has made clear the followings. 1. Careful searches into natural forests, in which both species grow mixed or next stand each other, were carried out in 25 locations in 14 districts, Hokkaido, during the period from 1986 till 1988. And nine trees to be identified as natural hybrids were sifted out from five stands in Yamabe (two stands), Yukomanbetu, Biei and Oketo. 2. Among them, four individuals lie between both species in such characteristics as the time of bud-opening, the abundance and arrangement of stomatal lines and other characters of needles, the hairiness of current-year branchlets and others (hereafter these called g×jA type). The other five (g×jB type) represent features very similar to those of Yezo spruce, though easily distinguished form this by the pubescence of current-year branchlets and less abundance of stomatal lines on the upper surface of needles. 3. g×jA individuals are well coincident in many characteristics to g×jF1 individuals found in the sample plantation, while the g×jB are supposed as offsprings of F1 backcrossed to Yezo spruce, i.e., F1×j. 4. Those seedlings selected as hybrids out of the stock families in the nursery in 1982 and planted in the experimental fields represent better growth than both parental species at the ages of 12 and 14 years. But they are similar to Yezo spruce in the scarce formation of lateral branchlets on the current-year growth of main axes.
- 東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林,The Tokyo University Forests,東京大学農学部林学科,東京大学農学部附属北海道演習林,Department of Forestry, Faculty of Agriculture, University of Tokyo,University Forest in Hokkaido, Faculty of Agriculture, University of Tokyoの論文
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