ネパール産ミズキ属(Cornus L.)ノート
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概要
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標高2,000m前後の暖温帯域で,ネパール産ミズキ属として現在認識されている3種, Cornus macrophylla (クマノミズキ), C. oblonga, C. capitata (ヒマラヤヤマボウシ)を採集し,日本産近縁種と比較検討した。(1) C. macrophyllaは日本〜朝鮮半島に分布するC. brachypodaと同種とみなすか否か,主として雌蕊が棍棒状を呈するか(C. macrophylla),それとも円柱形でその先端,柱頭部だけが頭状に肥厚するか(C. brachypoda)について議論されてきた。筆者らは多くの標本を調べC. brachypodaはC. macrophyllaの種内変異と判断した。また中国雲南省北西部,四川省峨眉山および台湾でも本種を観察したが,花柱の形態以外の外部形態では日本産個体群との区別は困難であった。(2) C. oblongaの分類学上最も重要な点は本種が安定して4〜3室の子房を有することである。これはミズキ属の他の全ての種群が2室であるに対し,きわめて特異的である。またポストモンスーンから乾期に当たる10〜11月に開花し冬季間を通して果実が生長し,乾期の終わり頃の春(3〜4月)に熟果期を迎えるというミズキ属としては特異の開花結実サイクルを持つ。(3) C. capitataは暖温帯〜亜熱帯域に分布し,冷温帯域に分布の中心を持つヤマボウシとの比較が興味深い。即ち冬芽は芽鱗を持たず,小花群は小さな弁状の総苞片に囲まれるだけで裸出したまま越冬する。これに対しヤマボウシの小花群は内外2対の芽鱗片に包まれ,さらに2対の総苞片に抱かれる。またC. capitataの花梗が成熟時のおよそ1/3を年内に伸長する点も後者と異なる。
- 1993-11-01
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