顕微分光光度法による液胞および色素体の吸収スペクトルと含有色素成分の識別とについて
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概要
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各種の色素を生産する11科20種の植物について新鮮な有色細胞の液胞や色素体の光吸収を顕微分光光度計で測定し,吸収曲線の型,吸収極大(波長)およびそのピークの数から,供試植物を6群に大別した。各群(I〜VI)の生体スペクトルと主要な含有色索との間には,次のようだ関係がみられる。I群は,可視部に吸収ピークを欠くもので,内色花,黄色花,並びに花弁の暗褐色部などの液胞にみられ,フラボノール,カルコン,オーロン,メラニン体などが含まれる場合である。II群は,赤〜紫色の液胞の吸収スペクトルについて534〜552nmに1個のピークが見られる場合で,これはアントシアニンまたはベタシアニンによる。III群は,液胞の吸収スペクトルに2個のピークが出現する場合で,黄色,燈色ないしは赤色の組織細胞にベタキサンチンだけ(455〜456nmと472nm)か,またはベタシアニンとベタキサンチンの両者(474〜476nmと536〜544nm)が含まれる。IV群は,3個以上の吸収ピークが出現するもので,青色花の場合(544nm,580nmおよび652nm)はアントシアニンの金属錯体またはコピグメント複合体により,燈色花の場合(440nm,450nm,468nmおよび530nm)は水溶性カロチノイドとアントシアニンの混在による。V群は,液胞にはピークが見られず,色素体に2個以上の吸収ピークが出現するもので,黄色,赤色ないし緑色の器官に存在するカロチノイド(448〜524nm)またはクロロフィル(436nm,470nm,624nmおよび678nm)の光吸収に基づく。VI群は,液胞に1個,色素体に2個以上のピークが出現する場合で,例えば液胞にベタシアニン(536nm),色素体にカロチノイド(456nmと468nm)が存在するときにみられる。また,生細胞で把握された吸収スペクトルは,抽出実験により確かめた主要色素の吸収スペクトルによく対応することが判明した。これらの事実によって,細胞内の各種の色素型を容易に識別することが可能になった。
- 1983-12-01
著者
-
岩科 司
国立科博・筑波実験植物園
-
大谷 俊二
東京農業大学生物産業学部
-
林 孝三
進化生研
-
岩科 司
国立科学博物館 筑波研究資料センター 筑波実験植物園
-
岩科 司
財団法人進化生物学研究所
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大谷 俊二
財団法人進化生物学研究所
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林 孝三
財団法人進化生物学研究所
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