ヒメイエバエ Fannia canicularis L. の発生源に関する知見
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概要
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1)北海道芦別市三菱鉱業社宅地区で, 1957年7月ハエの発生源調査を行つた結果, 当地区の屋内活動成虫の優占種であるFannia canicularisの発生源としては, たくあん桶が最も重要である事を知つた. 2)芦別地区で109戸のたくあん桶調査対象中, 56戸にF. can.を, 28戸にMuscina stabulansを見出した. 3)同時に行つた一般発生源調査では, ごみ箱からPhaenicia sericata, Ophyra leucostoma, M. stab., F. can., Sarcophaga peregrina, Lucilia illustrisの6種を得たが, 前3種が比較的多かつた.便池からは, Calliphora lata, S. pereg., S. similis, F. can., F. scalaris, M. stab.の6種を得たが, 前3種が比較的多かつた.畜舎の調査では, 豚舎からM. stab., Lucilidae sp., 鶏舎からF.can., O. leuc., 兎舎からO. leuc., 堆肥からSarcophagidae sp.を得たが, 何れも少数であつた. 4)芦別の調査で, F. can.の大きな発生源としてたくあん桶が重視されたので, ついで北海道美唄市(炭鉱住宅地), 小樽市(一般住宅地), 余別村(漁村), 及び秋田県大曲市(農村), 東京都中目黒(都市住宅地)神奈川県海老名町(農村)に於ても同様の調査を行つた. 5)たくあん漬の普及率は, 都市より農漁村に於て高く, また, F. can.の発生率は北になる程高い傾向がみられた. 6)たくあん桶から見出されたハエ幼期は, F. can.とM. stab.の2種で, 種類は少く, 発生量は甚だ大であつた. F. can.の単独群集か, F. can.+M. stab.の混合群集で, M. stab.の単独群集はみられなかつた. 7)たくあん桶の内部の状況によつて, F. can., M. stab.の発生率, 発生量に違いがみられた.すなわち, F. can.はかすのみ, 或はたくあんとかすを一緒にして放置してある場合に最も発生率, 発生量大で, 使用中のものはこれにつぎ, 残りかすの場合は非常に少かつた.つまり, かすが多少黒色に変化して来たもので, 水分がそれ程多くない状態に多い. M. stab.はたくあん, かすともに放置の状態に最も多く, 使用中, かすのみ, 残りかすの順序に少くなつた. M. stab.はF. can.に比し, やゝ水分を含む状態を好むようであつた. 8) F. can.の発生源について論じたが, 北海道でのF. can.の最大の発生源はたくあん桶だとしても, 本州以南, 或は都市部では, 便池, 或は動物の敷わらもかなり重要な発生源だと考えられる.特に便池の場合は, やゝ乾燥した糞便から好んで発生すると推定されるが, これについては, 更に詳細な調査の結果をまちたい. 9)最後に, タクアン桶からのハエの発生防止対策を論じた.
- 1957-12-10
著者
-
鈴木 猛
東京大学伝染病研究所寄生虫部
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緒方 一喜
国立予防衛生研究所衛生昆虫部
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長田 泰博
東京大学伝染病研究所寄生虫研究部
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平社 俊之助
東京大学伝染病研究所寄生虫研究部
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長田 泰博
東京教育大学農学部応用動物学研究室
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