閉鎖環境及び自然環境に於けるドブネズミ集団の動態 : ネズミの生態と駆除に関する研究第 3 報
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1)閉鎖環境と自然環境に於けるドブネズミ(Rattus norvegicus)集団の構成や, 構成の動態を観察し, それによつて自然集団でみられる動態が, 飼育環境下の集団に於てはどうか検討した.2)閉鎖環境に於ける観察は, 野外ネズミ飼育場内で行われ, その結果最優位の雄1頭及び雌多数, 及びこの群れから生れた雌雄の子鼡より成る一集団を構成した.一方自然環境に於ける観察は, ある畜舎に棲息するものについて行われ, その結果屋内の集団が雌雄の成体及び子鼡を含む三群より成ることを知つた.3)飼育場内に出来た集団には, 最優位の雄により他集団から移入した雄は排斥され, 雌のみ受け入れられた.なお同じ集団内では最優位の雄と雄子鼡, 及び同集団内の雄子鼡間には争いは生じない.このことから, 自然集団内に最優位の雄を欠く場合や集団が同じ群れから出発している場合など, 異集団間或は同集団内で, 雄が争いもなく交流し共存することもあるのではないかと考える.4)畜舎に於ける集団の中, 一方の群のみその勢力を拡大し, 他方は余り成長しないことを見出し, 群間にもかなり変動のあることを知つた.又, 半棟のみに薬剤を配置し, 集団の受ける影響を調べた.毒餌の配置された側の集団は完全に駆除されたが, 他方の集団にはほとんど影響を及ぼさなかつた.5)以上の結果, 自然環境及び閉鎖環境に棲息するドブネズミ集団が, 雌雄成体及び子鼡より構成される一集団として, 動態を示すことの一つの手掛りを得た.なお両環境に於ける集団の示す動態の関連については, 更に今後の機会に報告する.
- 日本衛生動物学会の論文
- 1959-04-05
著者
-
田中 英文
東京大学伝染病研究所寄生虫研究部
-
長田 泰博
東京大学伝染病研究所寄生虫研究部
-
佐藤 金作
東京大学伝染病研究所寄生虫研究部
-
長田 泰博
東京教育大学農学部応用動物学研究室
-
佐藤 金作
伝研・寄生虫
関連論文
- 八丈小島におけるマレー糸状虫症及びその媒介蚊の地域的駆除の試み : とくに DDT 粉剤のヘリコプター撒布について
- タテツツガムシ幼虫の数種ネズミ類に対する寄生態度の差異について : 恙虫の研究第 94 報
- ドライアイスと蚊張を用いた蚊の捕集方法
- 餌の摂取量に依るネズミの棲息状況推定について : ネズミの生態と駆除に関する研究 第 2 報
- 薬品中のコナダニ及び昆虫に関する調査研究
- ダイアジノン浸漬テープによる畜舎, 住宅及び商店のイエバエ成虫駆除実験
- 閉鎖環境及び自然環境に於けるドブネズミ集団の動態 : ネズミの生態と駆除に関する研究第 3 報
- ある小動物舍のドブネズミ Rattus norvegicus の棲息状況について : ネズミの生態と駆除に関する研究第 1 報
- 薬局に保管された薬品中のコナダニ其の他の異物について(第 11 回大会講演要旨)
- 東京近郊に於ける蚋の生態学的研究(第 6 回大会講演要旨)
- ある集団アパートにおけるハツカネズミの出現とその棲息状況について
- ある団地におけるハツカネズミの出現と, その棲息状況について(第 12 回大会講演要旨)
- フイラリア症媒介蚊駆除法の研究に関連した 1958 年度の観察
- 高尾山の一水系におけるブユ幼虫, 蛹の群集構造の季節的遷移について(第 9 回大会講演要旨)
- ヒメイエバエ Fannia canicularis L. の発生源に関する知見
- 硫酸タリウムの殺ソ剤としての使用法に関する 2, 3 の考察
- 九州端島におけるワモンゴキブリの棲息状況と駆除実験成績
- 二, 三の環境における住家性ネズミの棲息状況及び駆除法の検討(第 11 回大会講演要旨)
- ヒトスジシマカ Aedes albopictus の炭酸ガスによる誘引現象について (第 10 回大会講演要旨)
- 外部寄生昆虫, ダニ類の宿主感知要因としての呼気中炭酸ガスの意義について (第 10 回大会講演要旨)
- ヒトスジシマカ Aedes albopictus の炭酸ガスによる誘引現象について
- 衞生害虫等の population 推定について 1. : 実験方法及び結果(第 9 回大会講演要旨)
- 某病院内におけるチヤバネゴキブリ Blattella germanica L. のダイアジノンによる駆除の 1 例
- 畜舎及び堆肥場におけるマラシオン撒布のハエに対する効果