餌の摂取量に依るネズミの棲息状況推定について : ネズミの生態と駆除に関する研究 第 2 報
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概要
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1)屋内の鼡の棲息状況を, 一定方法で配置した餌の摂取される量から推定する目的で, 次の実験を行なつた.まず1頭当りの摂取量を求める為, あらかじめ摂取量を観察した後に, その場所の鼡の全部を捕獲して, 1夜間1頭当りの平均量を求める推定法を, コンクリートの厩舎, 実験室, ごみ捨て場, 及び木造倉庫, 研究室など6カ所で実施した.コンクリート厩舎内の観察では配置場所により, その摂取量に一定の傾向のもとに著しい差のあることがみられた.又, 総平均をとると, 餌の減少量は麸では1頭平均1晩に8.1g, 固形飼料では9.8g, クマリン系毒餌では9.4g, その無毒基材では8.7gとなり, ほゞ一定の値が得られた.又, この値を用いて, 他日棲息数を推定したところ, 実際に捕えた個体数とよく一致する成績を得た.しかし他の環境で観察した成績では, 周囲の本来の餌の量や, 与えた餌の性質の差により, 異つた値の得られることもみられた.2)1頭平均の摂取量を求める方法として, 次に, 或る場所で捕鼡前の餌の1夜間平均摂取量と, 捕鼡後の量との差を, 捕鼡数で割つて求める推定法を行なつた.その結果, 鼡の群の性質により14〜15g及び30gの値が得られた.3)実験室内で個別に飼育したドブネズミ9頭について, 固形飼料と水のみ与えた場合, 1頭平均の夜間摂取量はそれぞれ13g及び24cc, 又, 24時間では20g及び27ccを摂取した.4)異つた環境で, 配置した餌の場所別摂取量から, 一地域内の鼡の活動範囲や移動状況の推定を行つた.厩舎の観察では, 初め東側の餌のみ摂取されたが, 観察後約45日経て, 西側の餌も消費されはじめた.これを捕鼡器で実際に捕えて調べた結果, これら地区内に異つた構成の二群が棲息していたことが分つた.5)餌の嗜好性を調べる為, 固形飼料, 配合飼料の粉末, 米粉, 小麦粉, 玉蜀黍粉, パン粉, 魚粉, 食用油等を用いて実験を行なつた.その結果, 玉蜀黍粉, 米粉等が好まれ, 同じ素材のみより, 配合したものをよく摂取した.又, 同一の配合飼料を, その調整法を変え, 粉のまま, 固形にしたもの, 水練りのものの3型について, 同時に配置して比較したところ, この実験場所では後のものほど良く摂取された.6)毒餌の配置による駆除に際し, その摂取状況から, 鼡の棲息状況を観察した.環境が比較的閉鎖的な場合, 駆除も徹底し, 且つ長期に亘り効果が認められたが, 開放的な環境では, その駆除を徹底して行うことは困難であつた.7)以上の結果から, 環境条件, 餌の性質及び配置法などを充分に考慮に入れると, その消費状況から, 鼡の棲息数及び活動状況を或る程度推定出来ると考える.
- 1958-04-10
著者
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田中 英文
東京大学伝染病研究所寄生虫研究部
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長田 泰博
東京大学伝染病研究所寄生虫研究部
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佐藤 金作
東京大学伝染病研究所寄生虫研究部
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長田 泰博
東京教育大学農学部応用動物学研究室
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佐藤 金作
伝研・寄生虫
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