水田における蚊幼虫の発生動態に関する研究とくに稲作管理との関係をめぐつて
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1962年3月から11月にいたる間, 川崎市北郊の約42aの水田で, 防除を目的とした蚊の発生動態の調査を行なつた.調査中に得た種類は, 4属9種で, コガタアカイエカ, シナハマダラカが圧倒的に多く, 前2種より著るしく少ないが, キンイロヤブカ, コガタクロウスカがこれについで多かつた.水田では, コガタアカイエカとシナハマダラカが圧倒的であつたが, 用水路では, コガタクロウスカが優占種であつた.水田における蚊幼虫発生の周年消長を論ずる場合, 稲作作業歴から, 次の4期に区分して考えると都合がよかつた.第1期(苗代作りから田植まで : 4月13日〜6月11日).第2期(田植からパラチオン散布まで : 6月12日〜7月14日).第3期(パラチオン散布から中干し開始まで : 7月15日〜24日).第4期(中干し開始から落水まで : 7月25日〜9月13日).第1期は, まだ湛水面積が狭く, 季節も早く, 幼虫の発生は少ない.土塊の間の水たまりにキンイロヤブカが多かつた.第2期の後半にコガタアカイエカ, シナハマダラカの急激な増加がみられた.6月21日以降, 全水田に幼虫の発生がみられるようになつた.第3期は, パラチオン散布で始まる.これで全滅した幼虫も, 9日目にはほぼ元通り回復する.そして, 再び急激に増加するが, 中干し開始によつてここに第2のピークを作る.第4期には, 1〜5日間の中干しが合計8回行なわれた.中干の間に灌水が行なわれた時, 多数の幼虫が発生したが, 羽化にはいたらず次の中干しによつて死滅したようである.そして, 9月13日の落水で幼虫の発生は終りをつげた.すなわち, 水田における蚊の発生は水によつて大きく規制され, 7月下旬から始まる頻繁な中干しによつて, 成虫の発生を許す期間は6月中旬から7月下旬にいたる約40日間であつた.この間, 7月中旬に農薬散布が行なわれるので, 6月中旬から7月中旬にいたる間に対策を講ずればよいと考えた. 1つの試案として, この年の作業歴を基にすれば, 6月27日頃と, 7月6日頃の2回, 中干しか, 殺虫剤散布を行なえば, 充分な駆除効果を上げ得ることを確かめた.ライトトラップによる成虫の出現消長と, 水田の幼虫の消長との間には, そのパターンにかなりの相違がみられた.その因果関係を論じ, この年の長梅雨と低温が成虫捕集の時期をおくらせたこと. 7月下旬以降は中干しによつて成虫になり得ず, このために成虫の補給が絶たれたこと, によつて, 成虫では急峻な1つのピークができたものと考えた.
- 1963-10-31
著者
関連論文
- 川崎市のある住宅地における蚊幼虫の発生に関する周年調査
- イエバエ, キンバエ類の分散飛翔に関する記号放逐実験
- 下水溝のアカイエカ幼虫に対する各種殺虫剤の効果の検討
- 川崎市における蚊成虫相の周年調査
- 水田に発生する蚊幼虫の薬剤による防除試験成績
- ツメトゲブユ幼虫の殺虫剤抵抗性
- ある浄化槽におけるチカイエカ発生の周年調査
- 衛生害虫に対する殺虫剤残留噴霧の再検討 : 第 3 報 イエバエに対する Sumithion および Dipterex の効果について
- 川崎市におけるゴキブリ類の被害, すみわけ及び季節的出現消長に関する調査成績
- 熊本県下の 1961 年ポリオ流行時に行なつたハエ・ゴキブリなどからのポリオウイルス分離成績
- 北海道のポリオ流行地におけるハエからのポリオウイルス分離成績
- 高尾山一水系に於けるブユ幼虫, 蛹の群集構造とその季節的遷移について
- 妙高高原におけるブユ幼虫駆除の研究
- 水田における蚊幼虫の発生動態に関する研究とくに稲作管理との関係をめぐつて
- ヒメイエバエ Fannia canicularis L. の発生源に関する知見
- 衛生害虫に対する殺虫剤残留噴霧の再検討 : 第 1 報イエバエに対する DDT, γ-BHC 及び diazinon の効果について
- 水田における蚊幼虫防除の試み(第 16 回大会講演要旨)
- 水田における稲作管理と蚊幼虫発生との関係について(第 15 回大会講演要旨)
- 水田における蚊幼虫の発生動態に関する調査成績(第 15 回大会講演要旨)
- 九州端島におけるワモンゴキブリの棲息状況と駆除実験成績
- 九州端島におけるワモンゴキブリからの病原菌検索成績
- 衛生害虫に対する殺虫剤残留噴霧の再検討 : 第 2 報イエバエに対する各種有機燐剤の効果について