衛生害虫に対する殺虫剤残留噴霧の再検討 : 第 1 報イエバエに対する DDT, γ-BHC 及び diazinon の効果について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
イエバエの成虫対策として本邦でも実施されている残留噴霧の効果を再検討する目的で, 東京都八王子市城山山麓の山小屋10戸を利用して, 室内実験と, 野外実験とを結ぶ中間的な実験をおこなつた.薬剤は各小屋(床面積9.8m^2)の天井面に基準量(1m^2当り50cc)を目標に残留噴霧し, 撒布翌日から200日後に至る間, 数回にわたつて感受性, ならびに抵抗性のイエバエを放つて, その落下仰転虫数率を調べた結果は次のとうりである.1. 30%DDT乳剤6倍液の残渣においては, 気温が高い場合には, 撒布1日後であつても, ハエを放して20時間後に, 50%以下の落下仰転虫数率にとどまつた.しかし, 気温が20℃前後, もしくはそれ以下であると, 100%の落下仰転虫数率は示さないが, おおむね6カ月間にわたつて80%程度の落下仰転虫数率を示す.2. 10%γ-BHC乳剤20倍液の残渣において, 感受性の高槻系統では, 撒布後約1週間は70〜90%の落下仰転虫数率を示すが, 1カ月経過後には, すでに50%程度に低下する.また, 高槻系統に比べて, 約3倍の薬量に耐え得る烟田系統では, 1週間経過後にすでに15%の落下仰転虫数率に低下し, 30日後には零になつた.3.日当りのよい草原にある小屋より, うす暗い林中の小屋の方がDDTおよびγ-BHCの効果が終始すぐれていた.これはイエバエがうす暗い環境で, 薬剤残渣のついた天井に長時間とまる習性のあることや, 林中の小屋の方が低温で薬剤の消失も遅いということで説明できよう.DDTの場合は低温で効力が強く, 高温で効力が弱くなるので, 草原の小屋と林の中の小屋との差が一層明瞭になつたものと考えられる.4. 5% diazinon乳剤10倍液においては, 高槻系統に対して, 撒布7日後までは100%の落下仰転虫数率を示すが, 1カ月後には60%, 半年後には零まで落ちた.そして, 10倍の抵抗性を持つRP系統を用いれば, 撒布7日後においても, 落下仰転虫数率は16%に過ぎず, 20日後には零となつた.
- 日本衛生動物学会の論文
- 1962-08-31
著者
-
安富 和男
国立予防衛生研究所衛生昆虫部
-
高橋 三雄
国立予防衛生研究所衛生昆虫部
-
野口 圭子
国立予防衛生研究所衛生昆虫部
-
緒方 一喜
国立予防衛生研究所衛生昆虫部
-
高橋 三雄
予研衛生昆虫
-
井上 義郷
国立予防衛生研究所衛生昆虫部
-
堤 千里
国立予防衛生研究所衛生昆虫部
-
三原 実
国立予防衛生研究所衛生昆虫部
-
久保田 和美
予研・昆虫
-
朝比奈 正二郎
国立予防衛生研究所
-
井上 義郷
予研衛生昆虫
-
堤 千里
予研・衛生昆虫
-
久保田 和美
国立予防衛生研究所衛生昆虫部
関連論文
- 沖縄県知念産コガタアカイエカの殺虫剤抵抗性, とくにピレスロイド剤に対する抵抗性の機構について
- 各種昆虫の殺虫剤に対する抵抗性の研究 : 第 4 報 pp'-DDT 並びに近縁化合物の殺虫力に関する再檢討 (I)
- 東京夢の島に大発生したイエバエの殺虫剤抵抗性について
- 川崎市のある住宅地における蚊幼虫の発生に関する周年調査
- イエバエ, キンバエ類の分散飛翔に関する記号放逐実験
- 下水溝のアカイエカ幼虫に対する各種殺虫剤の効果の検討
- 川崎市における蚊成虫相の周年調査
- マラチオン抵抗性ネッタイイエカにおけるマラチオン分解活性の高揚
- マラチオン抵抗性および感受性ネッタイイエカによる ^C-マラチオンの分解
- デンソウイルスを感染させたクロゴキブリの核磁気共鳴法による体内代謝の研究
- プロトン NMR 法により明らかにしたアカイエカの発育に伴う代謝物の質的, 量的変化
- 79 NMR 分光法による各種衛生動物の生理生化学的研究 : 2. 無血清培地で自己増殖する昆虫細胞株の代謝について
- 3 NMR分光法による各種衛生動物の生理生化学的研究 : 3. アカイエカの発育にともなう動態観察
- 1960 年の群馬県フイールド調査による野外蚊からの日本脳炎ウイルスの分離(第 13 回大会講演要旨)
- 水田に発生する蚊幼虫の薬剤による防除試験成績
- 抵抗性イエバエ防除に関する実地実験
- Diazinon 抵抗性イエバエの駆除に関する実験 (第3報)
- Sumithion によるイエバエの駆除に関する実験
- Diazinon 抵抗性イエバエの駆除に関する実験 (第 2 報)
- Diazinon 抵抗性イエバエの駆除に関する実験
- 幼若ホルモン methoprene ならびにその徐放製剤 A に対する蚊幼虫の発育段階における感受性の変化について
- 11 Culex 属の数種の蚊の羽化後の行動について
- 15 蚊幼虫の発育段階による幼若ホルモン ZR-515 に対する感受性の変化について
- 13 幼若ホルモン類似体の分子構造と活性との関係における一考察
- 合成幼若ホルモン類似体のアカイエカ幼虫に対する致死効果
- 65 越冬中のコガタアカイエカ雌の卵成熟に対する幼若ホルモンと脳の作用
- 14 越冬蚊に対する juvinile ホルモンの影響
- Culex 属の数種の蚊の羽化後の行動について (第 2 報)(第 21 回大会講演要旨)
- コガタアカイエカの遠距離飛翔(第 20 回大会講演要旨)
- Culex 属の数種の蚊の羽化直後の行動について(第 19 回大会講演要旨)
- ツメトゲブユ幼虫の殺虫剤抵抗性
- チカイエカの越冬について (予報) (第 18 回大会講演要旨)
- 浄化槽に発生するチカイエカの駆除実験(第 17 回大会講演要旨)
- 浄化槽内に生育するチカイエカの駆除特に槽内微生物相に対する影響について
- ある浄化槽におけるチカイエカ発生の周年調査
- チカイエカ成虫の鑑別法について(第 16 回大会講演要旨)
- CSMA 系イエバエと高槻系イエバエの交雑実験による domestica-vicina 問題の考察
- 衛生害虫に対する殺虫剤残留噴霧の再検討 : 第 3 報 イエバエに対する Sumithion および Dipterex の効果について
- 東京営林署猿江貯木場における蚊の調査と駆除実験
- ある浄化槽におけるチカイエカ発生の周年調査(第 15 回大会講演要旨)
- 川崎市におけるゴキブリ類の被害, すみわけ及び季節的出現消長に関する調査成績
- シロハシイエカ, アカイエカおよびネッタイイエカの日本脳炎ウイルス感受性について(第 21 回大会講演要旨)
- 熊本県下の 1961 年ポリオ流行時に行なつたハエ・ゴキブリなどからのポリオウイルス分離成績
- 1961 年熊本県下のポリオ流行時に行つたハエ・ゴキブリなどからのポリオウイルス分離成績(第 14 回大会講演要旨)
- 北海道のポリオ流行地におけるハエからのポリオウイルス分離成績
- Diazinon 抵抗性イエバエ幼虫の駆除実験
- A-40 コガタアカイエカのアセチルコリンエステラーゼ遺伝子のクローニング(殺虫剤抵抗性の解析)
- Diazinon 抵抗性イエバエの駆除に関する実験 (第 4 報)
- Sumithion・DDVP 混合乳剤による抵抗性イエバエの駆除に関する実地実験
- 高尾山一水系に於けるブユ幼虫, 蛹の群集構造とその季節的遷移について
- 37 ピレスロイド剤抵抗性コガタアカイエカの抵抗性機構
- 18 モデルゴミ山法によるピリプロキシフェン 0.5% 水溶性剤のイエバエ羽化阻止効果
- 戸隠高原の十和田型 Epilachna について
- 妙高高原におけるブユ幼虫駆除の研究
- 19 1987 年における東京湾第 3 夢の島のイエバエの殺虫剤抵抗性
- 12 沖縄産コガタアカイエカの殺虫剤抵抗性の特徴
- 中央防波堤ごみ処分場(第 3 夢の島)のイエバエの殺虫剤抵抗性の変遷, 1978-1986
- 家屋害虫用殺虫剤の現状〔III〕(薬剤)
- 家屋害虫用殺虫剤の現状〔II〕(薬剤)
- 家屋害虫用殺虫剤の現状〔I〕(薬剤)
- 67 有機燐剤抵抗性コガタアカイエカは何時から出現したか?
- 埼玉県におけるシナハマダラカおよびコガタアカイエカの殺虫剤抵抗性
- 25 コガタアカイエカのアセチルコリンエステラーゼ
- 17 コガタアカイエカの殺虫剤抵抗性について
- 水田における蚊幼虫の発生動態に関する研究とくに稲作管理との関係をめぐつて
- 名古屋地方における蚊族幼・成虫個体群の動態(第 21 回大会講演要旨)
- ヒメイエバエ Fannia canicularis L. の発生源に関する知見
- 衛生害虫に対する殺虫剤残留噴霧の再検討 : 第 1 報イエバエに対する DDT, γ-BHC 及び diazinon の効果について
- 残留噴霧の再検討, 山小屋を利用した野外実験について(第 14 回大会講演要旨)
- Malathion によるハエの成虫・幼虫及び蚊幼虫の駆除実験
- 養鶏場に多量発生するオオイエバエの駆除について
- 数種の蚊の動物嗜好性について(第 22 回大会講演要旨)
- コガタアカイエカの卵発達に及ぼすラクトアルブミンの影響(第 21 回大会講演要旨)
- コガタアカイエカの日本脳炎ウイルス吸入量と増殖および媒介能との関係(第 20 回大会講演要旨)
- 九州端島におけるワモンゴキブリの棲息状況と駆除実験成績
- 79 ピレスロイド抵抗性コガタアカイエカに対する蒸散剤の効果
- 2 コガタアカイエカの性決定様式についての知見
- コガタアカイエカ系統間の日本脳炎ウイルス媒介能の差
- S14 大学の昆虫学教育に対する要望 : 衛生研究機関の立場から(わが国における昆虫学の教育と普及 : その現状と将来)
- 野外蚊の個体数および生理的年齢構成の変動調査のためのトラックトラップの利用
- 東京都内に於ける蠅の越冬蛹の調査予報
- 九州端島におけるワモンゴキブリからの病原菌検索成績
- 本邦各地産チャバネゴキブリの殺虫剤抵抗性の比較
- 6 青森県のヌノメモグリヌカカ
- 衛生害虫分野における薬剤利用
- 中央防波堤内側ごみ処分場(第 3 夢の島)のイエバエの殺虫剤抵抗性について (II)
- 東京西郊型 Epilachna の分布地域と食性について
- 中央防波堤内側ごみ処分場(第 3 夢の島)のイエバエの殺虫剤抵抗性について
- 同一の棲息場所から採集したイエバエの殺虫剤抵抗の変異 : 2. 千葉県大佐和産イエバエについて
- 無吸血生殖イエカいわゆる "molestus" の研究 : 第 1 報東京において初冬期に活動するイエカについて
- 同一の棲息場所から採集したイエバエの殺虫剤抵抗性の変異 : 1. 鉾田産イエバエについて
- オオニジュウヤホシテントウ群の問題点
- 15 号埋立地のイエバエの殺虫剤抵抗性について
- 衛生害虫に対する殺虫剤残留噴霧の再検討 : 第 2 報イエバエに対する各種有機燐剤の効果について
- 東京都猿江貯木場における蚊の調査と駆除実験(第 15 回大会講演要旨)
- 初冬期に吸血活動するイエカについて(第 14 回大会講演要旨)
- 不快昆虫の新顔オオワラジカイガラムシ
- タイプ室のゴキブリ
- CSMA 系イエバエと高槻系イエバエの交雑実験について(第 11 回大会講演要旨)
- ドクガ Euproctis flava 幼虫の相変異発現に関するその後の知見 (第 10 回大会講演要旨)