千葉県下の恙虫病調査研究 V : 房総半島南部に於ける恙虫の季節消長
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概要
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1. 筆者らは, 1953年11月から1955年の17カ月間に, 毎月野鼡類寄生恙虫の採集を行つて, 各種恙虫幼虫の季節消長を明確にすることができた.2. 調査地域は房総南部, 安房郡白浜町本郷の七島型恙虫病有毒地である.こゝから捕獲した野鼡類は4種類249頭で, このうちアカネズミは毎回の調査に捕獲した.3. 採集恙虫は総数24, 978疋, 2属8種で, 最も多いのはT. scutellarisの10, 766疋(43.1%)であつて, この地域の重要な疫学的特長である.4. 各種宿主は, それぞれ恙虫寄生相を異にしていた.即ち, アカネズミ171.6疋, ハタネズミ361.7疋(ハタネズミ及びヒミズモグラの捕護された54年12月から55年3月までの成績)でハタネズミが数多くの恙虫を寄生させていた.又T. intermedia, T. mitamuraiはアカネズミから1疋宛しか採集されていなく, その殆んどがハタネズミから得られたことは宿主特異性として興味がある.5. T. scutellarisは9月末から3月まで見出され, T. pallida, T. fujiはともにこれより多少おくれて発生を始め終熄したが, T. kitasatoiは四季を通じて発生しているようであつた.このように各種恙虫はそれぞれ特異的な季節消長を示していた.6. T. scutellarisは9月末から3月迄発生しているようであるが, その殆んどは1, 12月に集中して発生していること, 又この季節の気温の上から, T. scutellarisは夏を過ぎて凡そ20℃前後の頃に発生を始め, ほゞ10℃前後を下る季節に急激に減少した. T. pallida, T. fujiはT. scutellarisよりも低い気温の季節にも多数の発生が見られた.7. Lindane粉剤の地表撒布は, T. scutellarisの発生に著るしい影響をあたえたようであるが, T. pallidaを除く他の恙虫幼虫に対してはそれほど顕著な差が認められなかつた.本研究の一部は, 千葉県衛生研究所年報Iに第II報, 第9回日本公衆衛生学会総会及千葉県衛生研究所年報IIに第III報, 第7回日本衛生動物学会総会(第14回日本医学会総会)に第IV報を掲載乃至口演したので, 本報ではその後の調査成績を加えて第V報とする.稿を終るに当つて, この長期に亘る研究調査に対して終始絶えざる御援助並びに御好意を賜つた館山保健所遠藤愼三, 島村多之助, 長井和行氏外関係者各位, 千葉県衛生研究所中台, 浅岡, 海保, 宇野沢諸氏及白浜町役場衛生主任山口一男氏に深甚の謝意を表す.
- 1955-09-30
著者
-
佐々 学
東京大学伝染病研究所
-
鈴木 猛
東京大学伝染病研究所寄生虫部
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林 滋生
東京大学伝染病研究所寄生虫研究部
-
三浦 昭子
東京大学伝染病研究所寄生虫研究部
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緒方 一喜
東京大学伝染病研究所寄生虫研究部
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佐々 学
佐々衛生学研究所
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田中 寛
東京大学伝染病研究所寄生虫研究部
-
鈴木 武夫
千葉県衛生研究所
-
七山 悠三
千葉県衛生研究所
-
若杉 幹太郎
東京大学伝染病研究所寄生虫部
-
若杉 幹太郎
伝研・寄生虫
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