広島県下における恙虫類の季節消長の研究
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概要
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1.我々は1956年2月より1957年2月にかけて, 1年間毎月ほゞ1回の割で, 呉市の阿賀町休山の中腹及び郷原町渡川の山林で野鼡を捕穫し, これに寄生する恙虫相の季節的な消長を比較観察した.2.阿賀は海岸に近い植物相も貧弱な地形の地域であり, 鼡相も貧弱で年間を通じアカネズミ36頭をえたにすぎなかつたが, 恙虫は12種に達した.渡川は深い山林で, 1年間にアカネズミ22, ハタネズミ5, ヒミズ3頭, 計3種の宿主をえたが, 恙虫相は逆に貧弱で, 8種にすぎなかつた.3.季節的には, 阿賀ではGahrliepia saduskiが年間を通じて採集され, とくに10月, 12月の秋と, これについで3月の春に多かつた.渡川では本種は夏にはみられず, 12月に最高であつた.fujiは両地とも秋から春にかけて多数に採集され, kuroshioは阿賀ではほとんど年間を通じて発生していたが, 渡川では3月と12月に少数とれたのみであつた.kitasatoiも阿賀では7月を除いて全期間多数採集され, とくに12月と3月に多かつたが, 渡川ではアカネズミに全く採集されず, daisenも阿賀では夏を除いて秋から春にかけて見出されたが, 渡川には見出されなかつた.pallidaは阿賀のみに採集され, その発生期間は北日本に比べて短くて10月から1月に限られていた.4.以上の所見から, Gahrliepia, fuji, kuroshio, daisen, pallida, kitasatoiなどの阿賀における主要種はいずれも幼虫が主として秋から春にかけて発生する型で, その発生期間及びピークについては九州や本州東北部に比べて特異な差があることが見出された.また, 渡川は植物相や鼡相は豊富であるにかゝわらず, 恙虫相は逆に貧弱で, 種類数が少いのみならず, 主要種の発生期間が短いという興味ある所見をえた.
- 1959-04-05
著者
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佐々 学
東京大学医科学研究所寄生虫研究部
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佐々 学
東京大学伝染病研究所
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中村 玄
広島大学医学部第一内科教室
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高祖 讓
広島大学医学部
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吉岡 郁夫
広島大学医学部
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中村 玄
広島大学医学部浦城内科
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